僕の見たスピルバーグの話していた相手は無線士の父親と宇宙人ポール

 「マーシャル諸島ラゴス島に生息していた恐竜の生き残り(ゴジラザウルス)が、ビキニ環礁の水爆実験によりゴジラ化した」

 『ゴジラVSキングギドラ』で語られるゴジラ誕生秘話である。劇中では、ゴジラに変貌する前のゴジラザウルスを別の場所へテレポートさせるため、太平洋戦争中のラゴス島へタイムトラベルを行うのだが、主人公たちの乗るタイムマシンの光を見た米兵が部下に対し「未来の息子に話してやれ、スピルバーグ少佐」と語りかける場面がある。この「スピルバーグ少佐」は、当然スティーヴン・スピルバーグの父親であるという示唆で、いわば制作側のちょっとしたお遊び的オマージュである。

 実際のスピルバーグの父親は、B-25の無線士を務めていたらしい。『ゴジラVSキングギドラ』に登場するスピルバーグ少佐の役割が具体的に何だったのかはよく分からないが、マーシャル諸島付近の軍艦上でUFOを見たという話は聞いたことがない。しかし、幼い頃のスピルバーグ少年に流星雨を見せて宇宙への興味を抱かせたのは事実らしく、ひょっとしたら、戦場で何か不思議な体験をしたことはあるのかもしれない。未来の息子に話したかどうかは別としても。

 さて、前作の『ゴジラVSビオランテ』において、物語の重要人物でもあった「サラジア共和国」の工作員役を、他の外国人俳優の通訳として現場に来ていただけのマンジョット・ベディにしてしまった反省からか(オーディオコメンタリーで「外国人キャストはもう少しきちんとキャスティングすれば良かった」と監督の大森一樹が語っている)、『ゴジラVSキングギドラ』には、チャック・ウィルソンをはじめ、公開当時人気のあった外国人タレントが数名出演している。スピルバーグ少佐を演じたのはダニエル・カールで、その上官役にはケント・ギルバートという、今ではおそらく共演することもないであろう二人の貴重なツーショットが上記シーンだったわけである。ちなみに、ケント・デリカットとケント・フリックは残念ながら出演していない。

 ところで、チャック・ウィルソンと共に未来人を演じたリチャード・バーガーの本業は「国際研究家」らしいのだが、映画公開当時の私は、何かの番組で和田勉らと駄洒落対決をしている姿くらいしか知らず、勝手にコメディアンだと思い込んでいた。もっとも、この時期の「外国人タレント」の多くは、頻繁にテレビバラエティでひょうきんな姿を見せてくれていたため、総じてコメディアン的な印象があった。しかし、実際に本業もコメディアンだと言って差し支えなさそうなのは、今回の日記上で挙げた中だとケント・フリックだけである。そんなケント・フリックのコメディアンな勇姿を堪能できる映画は、ゴジラシリーズではなく岩井俊二監督の『スワロウテイル』だったりする。