お猫を撮りたがるカモども(猫たちはあなたの危機意識を知っている)

 『世界ネコ歩き』でお馴染みの岩合光昭によると、猫に対しては「君に興味はないですよ」というような雰囲気を出しておいたほうが警戒心を解いてくれ、結果的に交流もしやすくなるらしい。たしかに、私はそもそも猫が極端に怖いわけでもなければ、見つけ次第抱き寄せようと躍起になるほどの猫好きでもなく、そのためか実家の庭を手入れなどしていると、いつの間にか野良猫がこちらをじっと眺めていることがあり、そのまま放っておくと知らぬうちにすぐ傍に鎮座していたりもする。猫と人間の平和で正しい関係性のようにも思えるので、悪い気はしない。

 しかし、改めて思い返してみると、徒歩であちこち出歩くことは圧倒的に神奈川での専門学校時代のほうが多かったのに、そこでは猫を見かけた記憶がない。松山千春の「大空と大地のなかで」そのままな景色が広がる実家近辺のほうが野良猫の数も多いのかもしれないが、都会は都会で野良猫にとって暮らしやすい場所であろうし、犬と比べれば駆除対象になることも少ないはずだ。実際、コンビニ裏の「猫だまり」など、都会の猫の姿はSNS等でも頻繁に目に入ってくる。

 神奈川での私が猫に対して興味津々だったのならば、岩合さんの理論的に出くわす頻度が低くなっていたのもわかるが、別にそういうわけではない。ただし、猫に限らず、周囲に対する警戒心は強くなっていたかもしれない。実家の庭では、熊と蜂と猟師の流れ弾くらいしか特別に気をつける必要もないが(その3つだって、蜂以外は視界の隅に入ったことすらない)、神奈川では不快害虫の類も含めると、アンテナの感度を高めておくべき対象が山ほど存在していた。そんな私の(過剰だったのかもしれない)警戒心を察知され、猫たちに避けられていたのかもしれない。

 だとすると、都会において猫と遭遇しやすい者は、危機感の足りない人物だということになりそうだ。この理論が定着すると、きっと遭遇した猫の写真をSNSに上げがちな者は、ひったくり等にも狙われやすくなるだろう。今のうちから要注意である。