「それより僕と踊りませんか」とは言われたけれど、輪になって踊るとは聞いていない

 小学校6年時の学習発表会で下級生たちが「北の国から」のテーマ曲を合唱していたのだが、これが集団の呻きにしか聞こえない代物で、見守っていたご家族の皆様もさすがにざわついていた。あからさまに日頃の学習が失敗している様を保護者や他学年の児童、教員に晒しつつ、黙々と指揮していた彼らの担任教師は、あの時どんな気分だったのだろう。そもそも指揮が必要とも思えなかったが。

 幸い、普段の下級生たちの学級が深刻なほど嫌な空気に包まれていた様子はなかったし、私自身、その教師が特に嫌いだったわけではない。しかし、個人の人間性の善し悪しと関係なく、しばしば担任教師というものが受け持った生徒たちに無茶をさせたがることに関しては色々と思うところもある。

 『欽ちゃんの仮装大賞』などで、どこかの学校のクラス一同によるパフォーマンスというものを目にするたび、少なくとも一人くらいは居たと思われる参加に反対した者が気の毒で暗い気持ちになる。かく言う、私がそうだったからである。運動会や学芸会のような、学校行事としてオーソドックスなものだけであればまだしも、本来ならば一部の希望者だけが参加すべき地域主催のスポーツ大会や各種イベントに対して、やけに積極的な担任に当たるのは災難でしかない。児童数の少なさゆえに、参加となると怪我や持病でもない限り、半強制的にメンバーに組み込まれてしまうのだが、私はミニバレー大会もYOSAKOIソーランもやりたくなどなかった。面倒くさいのではなく、はっきりと「嫌」だったのだ。

 もちろん、児童たちの大半が反対していれば、私も気に病むことはなかったのだが、やる気になる奴というのもいて、そういう者に限って声が大きかったりするので、妙なイベントに参加させられるくらいなら、日々の宿題の量を増やされた方がましだと考えるような者の意見が通る見込みはないと言ってよかった。

 今回、この場を借りて告白します。小学5年のミニバレー大会前、左手小指の付け根あたりを4針縫う怪我を負い、その理由を「家に届いた荷物の開封においてカッターナイフの扱いをしくじった」と報告しましたが、本当は出場するのが嫌で自ら切り裂いた傷です。痛い思いの甲斐あって不参加の権利を獲得しましたが、今もうっすらと傷痕が残っています。当時の担任Kに対しては、その親族も含めて憎み続けています。それでは。

氷の世界

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