騒々しい創造

 「お隣さん」と言っても街に住む人からすれば「隣」と呼ぶには離れ過ぎていると感じるであろう、しかし、この大平原においては紛れもなく「お隣さん」であるお隣さんが、新しい家を建てている。お隣さんとは、別に何かトラブルを抱えているわけでもなく、いたって良好な関係であり、そのような間柄の相手が家を新築することを恨んでしまうほど、さすがの私のすさんではいない。間柄が良好ではないのだったら別だが。

 さて、お隣さんが家を新しくすること自体は良いのだが、どうにも建築音が気になってしまう。近所で建設作業が行われるという経験が豊富なわけではないけれど、お隣さん自身の意見も踏まえたうえで述べさせてもらうと、作業が少々荒っぽいような気がする。たぶん、別の業者ならば、ここまで音は響いてこないのではなかろうか。

 破壊も創造も結局は作業であり、その副産物ともいえる作業音は、基本的には騒音でしかない。ノイズミュージックは好きだが、工事現場の音が好きなわけではないので、何らかのカタルシスを得ることもできない。自分の新居でもないので、端的に「うるさい」としか思えないのである。

 完成までどれほどの時間がかかるのか分からないが、別のバカが乗り回す下品な車のエンジン音とも相俟って、可能ならばこちらが倍以上の音量で山崎マゾのように叫びたい衝動にも駆られるのだが、業者が荒っぽい、もっと言えば「雑」であることに薄々気づいているらしいお隣さんの不安を思えば、音以外の被害を受けることのない私が怒りをぶちまけるのも申し訳ない。住宅街からすれば「お隣さん」とは呼べないほど離れているので、仮に新居が崩壊したところで、私の家に被害が及ぶことはないのである。時期も時期なので、古くなった我が家の大掃除を念入りにおこなって気を紛らわせておこう。