『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(6)

 そんな私も児童の集まる場では何度かパニックに陥った。卒業式の最中に一人だけパニックの発作が起きたときは、椅子に嵌ったまま廊下へ出るも誰も気にとめなかった。いけすかない連中が小馬鹿にしながら「アイスはこっちにあるよ~」などと言って呼び戻そうとしてくるので発作は悪化した。朝の歯磨きが短くなったので改めて磨き直そうとした時も、歯磨き粉を忘れてしまい歯ブラシとコップだけを持って水道へ向かったが、いつも以上に時間が早く流れ結局物足りずに終わった。体育館では既に全員が着席しており、慌てた私は適量を越えた薬を飲み込み、3時間目の休み時間まで眠り続けた。誰も起こしてくれなかったことを知ったため、私はほんの少しだけ発作を抑え込めるようになった。

 勿論、その分だけ歯を削ることにはなったが、おかげでマサ君がタッちゃんにかけた「人って必ず死んじゃうんだよ」という言葉を耳にしても冷や汗をかく程度の影響で済んだ。もっともタッちゃんの「もう死んでるんだよ」という返答が知ったうえでのことだったのか、はたまた地頭が悪いだけだったのかは今考えてもわからず、やけに白みがかったグラウンドの不気味さとも相俟って、結局私は完治しないまま生きなければならなくなるのを知った。