『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(12)

 高校はそれぞれが異なる学校に進んだため、最初の文化祭で数名の騒がしい男子がモトムラ先生の恥ずかしい写真を奪って逃げている場面に出くわしても、私は黙って観察するだけだったし、止める義理も助ける義理もなかった。はじめのうちはモトムラ先生も油断していて、笑いながら追いかけるだけだった。調子にのった男子達がモトムラ先生を裸にし、奪った服を隠してしまったあたりで、帰宅しなかったことを少し後悔した。モトムラ先生がすすり泣きながら服を探している姿が見えたが、あまりに痛々しかった。客も店員も学生しかいない校内の居酒屋からは「この状況じゃ客は来ないな」という声が聞こえた。

 教頭やフカヅメあたりによる大説教が始まる気配を感じたので、とりあえず裏口から抜け出し、病院前まで迎えに来てくれているはずの父に伝えに行くことにした。しかし、駅前の大きなモニターで彼女が放送局の番組に出演する予告が映されたため、防寒着を父に預け、私は一度校舎まで戻ることになった。校舎の前では彼女が文化祭用の看板作りを手伝っていた。薄着でいることに驚かれたが、モトムラのことは知らない様子だったので一応伝えておいた。いつもよりどこか勝気な性格に見えたが、血糊を流すためのホースを支えてほしいと頼む姿は変わらずだったので、防寒着を置いてきたことを悔やんだ。格闘技を習っているらしい彼女の友人のことを後輩たちが冷かしてきたので、なんとかフォローしようかと考えたが、私がキックやノアちゃんの知人であることに気づいて逃げて行った。