『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(13)

 フカヅメの説教は珍しく全校生徒にまでは向かなかったため、血糊が増えても私は予定通りの時間に帰宅することができた。この時の事は五年後にボギーや山上にも話した。食事担当だった私は、ケンタッキーフライドチキンを大量に購入しておいたが、無関係の学生に食われてしまい、ボギーと山上は残り物をこっそり持ち帰っていた。悪いのはミツデラだと言うと、ボギーが珍しく同意した。山上はコーラがないと不満を述べた。山上がうるさいので、近くのコンビニでコーラを探した。聞いたことのないコンビニで、コーラを探している最中に店名は忘れてしまった。結局コーラは見つからず、厄除けの意味も込めてソーダ水を3本購入した。ボギーには不要だったが、山上がゼミ長の部屋に撒くことを提案し、私は見物を約束した。

 山上の住むアパートに向かうと、肥満体型の2人の女が犬をつれて庭に侵入していた。犬はところどころ体毛が剥げていて、良くない病気の匂いがした。近所の老婆が注意するも会話が通じず埒があかない。ボギーがマツコを連れて木刀を手に立ち向かっていくのが見えたので、私は後方支援にまわった。山上は部屋の中から「この催しのテーマは不可能!」と笑いながら叫び続けていた。私とボギーには所謂元ネタが分かっていたが、ゼミ長が知るはずもなかった。原曲のファンであったお嬢は「ヘンリー・ワイアットの風景画みたいだった」と後に感想を述べた。ソーダ水はトラック一杯分必要だった。