『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(18)

 中学での給食はパンがとり放題だったが、喰えそうなものはほとんどなかった。いつも食パンを2切頂いたが、隣の席のアトシラさんが口に運ぼうとしているパンには何かが表面で蠢いていた。それは5匹ほどの小さな桃色の虫で、オリーブの実には虫の青い卵があり、割れると雛になりかけのものが溶け出した。

 中学の図書室は教員たちの品格と比例するかのように狭く、清掃中に月の本を探しに来た羽衣さんの邪魔になってしまったこともあった。背後から羽衣さんが手を伸ばしてくるのは満更でもなかったが、すぐに「ごめん」と言って移動した。幸い「大丈夫、集中してるとわかんなくなるよね」と言ってくれた。

 教室で誰かの投げた竹槍が肩に刺さったのは中学2年の6月のことで、蘭人にいたっては「これで奴らを追放できる」と職員室まで抗議に行ったものの、私の傷が浅かったうえに興奮しすぎたのかうまく喋ることもできず、教員たちから冷たい目で見られていた。クリハラは武器を隠したまま様子を窺っていた。

 クリハラの家にはじめて行った時、彼の部屋は浸水していた。気にせず少し遊んでみたが、時おり半透明の生八つ橋のような生き物が手にぶつかった。クリハラはプラナリアだと言い張るが、どうしてもそうは思えなかった。害はないようだったので、手に乗せてみたり、水に戻して手探りで追ってみたりした。