『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(25)

 その翌日、無理矢理参加させられた合コンで、お嬢は「好きなタイプは身体に良さそうな人。でも恋愛沙汰は身体に悪そう」とだけ答え、皺だらけの五千円札を置いてすぐに店を出たという。後に「恥じらいの四戦士」と呼ばれた関東での私の友人たちにこの話をすると、K氏だけがやけに興味を持ってくれた。専門学校の理事会が学生たちの乾いた身体を栄養にして「へいま様」を蘇えらせようとしているとK氏は語った。濃いめコーヒーを飲み過ぎたK氏の妄想だと初めは私も思ったが、山上と共に退学者の下北昇平が資料室から借りっぱなしにしていたビデオテープを部屋から回収した日にそれが真実だと知った。

 専門学校一年目の冬に実家へ帰省すると、庭に積もった雪のなかに下半身の埋まった子猫がいるので助けてやってくれと母に頼まれた。雪をかき分ける最中、猫の頭に手が当たり、その拍子に猫のまぶたは片方だけ開いたままになった。どうやら死んでしまったらしいが、それが「へいま様」の影響だとは後に知った。

 猫の遺体は小学校のイタダキ校長に頼んで埋葬してもらった。小学6年の冬、大嫌いだったスケート大会を終えた私にイタダキ校長は涙を浮かべながら「よかったな。もう二度とやらなくて済む」と言って称えてくれた。青年団のモガリは眉を顰めたが、イタチの絞り汁を飲んでカップク山の療養所に運ばれた。モガリがイタチの絞り汁を飲んだのはカップク山のスケート場で、休憩所のタンクにはイタチ以外にも様々な動物の死骸が腐り果てて液状化しており酷い悪臭もした。横着して近くの井戸水で頭を洗った従業員の女は長いこと臭いがとれなくなった。不謹慎ながら連中が不幸に見舞われたのは嬉しく思った。