『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(27)

 飲み屋通りは湿度も高く、近づくのも不快だったが、その先に崩れかけた木造の中古ビデオ屋があるので我慢して頻繁に足を運んだ。どう調べても素性がつかめない怪し気な販売元のビデオばかりの並んでいる店で、初めて行った際には『奇習!悪習!猟奇奇人地帯』というタイトルのビデオを購入した。ビデオの内容は事件や事故のニュース映像らしきものを集めたものだった。フェイクではないようだったが、見たことのない映像ばかりで、パッケージの裏に小さく写真が印刷されていたカースタント事故の映像は特に惨く、さすがの私も数日間は麺類や焦げ目のある食品を口にすることができなくなった。

 幼稚園の倉庫に保管されていた食品人形は、私が卒園する頃には黴と虫の混合人形になっていたが、園児へのお仕置きとして混合人形をちぎって食べさせた職員が高校を卒業して少しした頃に逮捕された。私はその職員の顔も名前も知らなかったが、当時の同級生たちが卒園後も顔を出していたと知り驚いた。遠足と称して海辺でアカエイを銛で突く練習をさせられたのは当時の園長の趣味によるもので、刺せば良いと言われたが、暴れたエイの体が回転して尾の毒針がこちらに向かってくるのを恐れた私は途中で投げ出していた。だが、たしかに思い返してみれば、私以外の者は恐れることもなく海を楽しんでいた。幸い園長は離れて見学することを許してくれたが、しばらくするとアカエイたちは一斉に空へ飛び立ちはじめた。上空を大量のエイたちが飛んで行き、どこに落下するかもわからないなか、私は公民館の方向へ走り続けた。エイの飛距離はかなりのもので、ぶつかることはなかったが、振り返る余裕はなかった。

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