『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(43)

 不器用の烙印を押されたことが悔しくて、誰もいない教室の隅で数秒だけ泣いてみたが、すぐに怒りの占める割合のほうが多くなり、校門近くのアスレチックの壁を蹴りつけると、出来の脆さゆえに板が外れ、不思議と教頭は笑って修理してくれたが、2年と持たずに児童にとっては良いトンネルと化していた。私にはトンネルというよりギロチン台に見えたが、同じことを思った者がいたようで、ひどく恨まれていたラグヘッドボール選手の母親でもある教師が首を固定され、別の女子児童へのあからさまな贔屓によって点数を奪われた男子児童が濡れたタオルで教師の首を叩くと、思い込みの力で地面に転げ落ちた。関わった児童たちはすぐに逃げ去ってしまったようだが、たまたま通りかかり、すぐに何事が起きたか理解してしまった両足のカブは、児童と教師を天秤にかけ、4種の農薬を混ぜて作った溶剤で教師の身体を綺麗に地面に染み込ませ、念の為に安いコーラとカラスムギで消毒し、残りで飢えと渇きを癒やした。

 両足のカブに溶剤の作り方を教えたのは私だが、元々カブと私の仲は良好なものではなかった。カブはカブの祖父に似て、常に自分が正しいと考える厄介者だったが、両足と呼ばれざるを得なくなってからは、さすがに態度を軟化させ、私も譲歩としてカブの身体を処理する為に作った溶剤の仕組を教えた。溶剤は後に山上によって精度が高められ、へいま様や専門学校の悪質な掃婦をすっかり流してしまうことにも成功した。掃婦の清掃は不適切だが、汚物も共に溶かせたらしい。見た目や匂いは市販のシャンプーにそっくりで、誤って誰かが頭皮に塗布してしまわぬよう、製法は私たちを含めて4人しか知らない。