この道はいつか君が事故る道

 もちろん個人差は大きいだろうが、知人の畑作農家によると、農業を営む者は他人の畑の状況が気になって仕方ないらしい。田畑の拡がる地域で、あからさまな脇見運転の軽トラックに出くわしたなら、それはおそらく近所の農家である。北海道は自動車事故の発生率が高く、その一因は農家の方々のこういった習性が関係しているような気もするのだが、今のところ免許更新での講習でそんな話を聞いたことはない。優良講習だからだろうか(頑なに運転を拒んでいるため、違反のしようがないだけの話ではあるけれど)。

 農業と自動車事故の関係でいえば、畑も含めた広い私有地の影響もあるはずだ。小・中学校時代、周りは農家の子供だらけだったが、手伝いの関係で(あくまで私有地内で)すでにトラック等の運転経験があった者も少なくはなかった。性善説的に考えれば、免許取得前から高い経験値を持っていると言えるのだろうが、現実は慣れが悪い方向に働き、無謀な運転をおこなう場合のほうが多いだろう。当時の同級生・上級生・下級生たちの顔を思い浮かべてみても、(私の印象でしかないが)道路交通法を順守していそうな顔は、残念ながら数的に劣勢である。実際、すでに事故を起こした例が数件耳に入っている。

 私が周囲の圧力に屈して普通車免許(AT限定)を取得はしたものの、いつまでたっても実際に運転する気がおきないどころか、自家用車というものに憎悪すら抱いているのは、こういった環境も大きい気がする。物心つく前から、私の暮らす地域の道路事情は荒っぽく、欠片の慎重さも見せずに自動車免許取得を心待ちにする連中は無神経だとしか思えなかった。成人するまでに、どんな形でも良いから、こんな田舎でも自家用車など不用な世の中になっていれば良いなと期待していたが、30代も後半となった今なお、交通事情は変わらぬままである。