憎むな殺すな、赦しはしません。

 憎むべき相手が高確率で先にこの世から消える場合、「先に消える」というだけで消える程度の憎しみだったのならば幸いだろうが、「死に逃げ」なんて言葉もある通り、先に消えてもらうだけでは、こちらの気が済まない場合も多々あるだろう。少なくとも、私には「死に逃げされた」と感じてしまう故人がすでに10名以上存在している。

 「憎むな殺すな赦しましょう」は、月光仮面の理念でもあるが、確かに許せる心を持った者の方が強いのだろうと思う。だが、大半の人間が許せてしまう程度の憎しみだった場合や単に被害者が鈍感なだけの場合まで「強さ」に含める必要はないだろう。かねがね感じていることだが、鈍感な被害者というのは、たぶん別の多くの場面で鈍感な加害者となっている気がする。「自分がされて嫌なことは相手にするな」という言葉も、鈍感な人間にとっては何の戒めにもならない。「多少殴られるくらいどうってことない」と本気で思える人間は、他人を多少殴っても良いことになってしまう。痛みが快感だという者だって少なくない。いずれにせよ、「憎むな殺すな赦しましょう」が単純な善人さのアピールにしかなっていない者は大勢いて、そういった者たちは概ね鈍感であろう。

「お前は簡単に奴を許せるだろうが、そのことで奴を到底許すことができぬほど憎んでいる者が苦しむ可能性を少しでも考えたか?」

 「殺すな」以外はほぼ実践できていない私は、いつもそんなことを考える。

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