溶けにくいチョコバーとすぐに使える歯磨きセット

 日々すれ違う見ず知らずの他人が突然襲い掛かってきたらどうすべきか。いつも、そんなことを考え、ある程度身構えながら過ごしている。ひょっとしたら、特に運動をしていなかった時期でも太るということがなかったのは、世の中に対する警戒心によって余計なカロリーが消費されていたのかもしれない。すぐに歯を磨きたくなるため、ストレスによる過食に陥りにくいのも追い打ちをかけている。

 自分が思っているほど他人は自分のことを見ていないとよく聞くが、もちろん好意や敬意なんてものは最初から期待などできないけれども、マイナスの感情に関しては、どうしても可能性を拭えない。無差別の通り魔に出くわさずとも、ひょっとすれば私の姿が相手にとって全身を跡形もなくすり潰してしまいたくなるほど憎い人物にそっくりだったりするかもしれない。見事に瓜二つとまではいかずとも、どこかしらの角度から見た面だけが、憎い相手を連想させるといった可能性まで含めれば、とても能天気に歩いてなどいられない。石橋を叩いて渡るどころか、壊れるまで石橋を叩き続け「この貧弱な肉体が3万回殴っただけで壊れてしまうような石橋など信用できん!」と潰れた拳からぼたぼた血を滴らせながら言ってのけかねない生き方である。

 しかし、それほどまでに世の中を警戒しながら生きたところで、代償足り得るほどの幸福を味わえるのかは疑わしい。とりあえず、「死にたくはない」という生命体としての本能だけで、この歳まで来てしまったのだが、いつ「なんのための苦労なのですか」という心の内の声に突き動かされてしまうかわからない。ゆえに、自分の理性にも本能にも警戒しなければならないのである。