「おいで」なんて思っちゃいなかった

 この辺りにも出没しはじめているらしいとは聞いていたアライグマの姿を、先日はじめて目撃した。我が家の庭を悠然と通り過ぎていきやがった。

 小学生の頃、学習発表会にてアニメ『あらいぐまラスカル』のエンディング曲「おいでラスカル」を演奏させられたことがあったが、それに応えての出没というならば、あまりに時間が経ち過ぎている。そもそも、担任の勝手な選曲によって無理矢理練習させられることへの憎悪が溜まるばかりだったうえ、放映当時の子供たちならばともかく、90年代を生きる子供達だった我々は「アライグマはどうやら凶暴らしい」という情報を程度の差はあれ誰もが知っていたし、『けものフレンズ』でアライさんが人気者になるのも未来の話なわけで、本気で「おいで」などと考えている者はいなかったのである。

 はっきりと害獣認定されている現在のアライグマ君たちは、動物園等に引き取られたり、場合によってはジビエとして食われたりもしているらしい。調理方法はおろか、適切な捕獲方法も理解しておらず、そもそも何の心構えもない状態で窓ガラス越しに遭遇した私にはどうすることもできなかったわけだが、別にどうしても獲って食いたいわけではないので、それはいい。ただ、凶暴らしい害獣がそこいらをうろついているという現状は歓迎できるものではなく、家から出る際の警戒心を更に上げなければいけないだろう。当然、ただ外に出るだけでも余計な疲労が増すのだから、迷惑な話である。