風まかせ、風まかせ(『新・諸国漫遊記』に非ず)

 熱気球に関する事故の映像をYouTubeで検索してみると、素人が見ても強風が原因だろうと判断できる映像が大量にみつかる。主に海外の映像だが、危険は承知のうえで無茶をしがちなのか、はたまた、そもそも強風の中でのフライトが危険という意識が薄いのか。後者は特に問題が大きかろう。

 高所恐怖症だが気球を眺めるのは好きという、少々捻じれた嗜好の私は、何度も熱気球に関するイベントを見てはいるものの、実際に乗ってみたことは1度しかない。それも、小学校の行事の一環としてであったため、半ば強制的である。もっとも、寝坊して不参加となった児童たちも複数いて(熱気球のフライトは、風の穏やかな早朝に行われることが多い)、その件で出欠や成績に関してペナルティを負うこともなかったので、結果的には仮病ならぬ仮寝で乗り切れてしまう事態であったことが判明した。トラブルの際、自分だけは助かるために、数日前からあれこれシミュレーションをしていたのはなんだったのか。

 熱気球事故といえば、スペインで行われたバルーンフェスティバルにおいて、大型のクレーンに宙づりになってしまったクルー(イギリスだったか、ドイツだったか。とにかく、スペイン語圏外の国)の話を思い出す。ロープを降ろして傍の小高い丘へ引っ張ってもらおうとしたのだが、言葉の通じない現地のスペイン人たちは何を思ったか真下に引っ張りはじめてしまい、殺されるかと思ったという。真下に引っ張ってはいけないことくらい、すぐに分かりそうなものではあるが、日常的に関わるものではない対象を前にすると、とんでもないミスも犯しやすくはなるのだろう。

 強風の中でフライトを決行した熱気球も、ひょっとすれば、気球に関する知識のない者から強要された結果なのかもしれない。体験搭乗を楽しみにしていた小さな子供が泣いていたりしたら、知識や経験が豊富な者の中にも、なんとか頑張ってみるかと考えてしまう者が現れる危険もないとは言えない。寝坊して気球に乗れなかった当時の児童のなかには、かなり落ち込んでいた者もいたが、全員が時間通りに集合できていたとしても、天候が悪化すれば中止にはなっていたはずだ。しかし、そこで「せっかく集まったのに」などという知識も経験もない無責任は教員や親たちの声が大きくなってしまえば、悲惨な結果を招いた可能性もある。無事に済んで良かったのだが、やっぱり仮寝しておくべきだったのかもしれない。


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