奴らは殺生させるために寄って来る

 効果があるのかないのか、あるにしても我が家の立地条件で十分な力を発揮してくれているのか、そもそも単純に発生数が少ない状態だったのか商品の効果だったのかをどう判断すればよいのか。あれこれ悩みつつも、やはりこの時期になると買い込んでしまう。何の話かと問われれば、虫除け商品のことである。

 虫除けを置いてあるということは、虫が嫌いということである。仮に謳われるような効能のない商品だったとしても、それらが置いてあるということは、近づけば殺気立った人間が襲ってくるということなのだ。いい加減、虫たちもその辺りを学習してくれれば良いものを、天国への門をより狭くする使命でも与えられているのか、奴らは自分の命も顧みずに侵入してくる。奴らの方こそ、もっと命を大事にした方が良い。

 それでも、私の住処は田舎ゆえに昆虫の種類や数自体は少なくないのだが、とりわけ不快な類の虫どもとの遭遇率は、街に住んでいた時期の方がはるかに高い。人に嫌われやすい虫ほど人を好んでいるようで、ラブストーリーに感情移入しやすい者ならば、切ない片想いのようだと考えるのかもしれないが、私にそのような情緒は存在していないので、ストーカー系のホラー話にしか思えない。しかも、相手が虫では、ただでさえなかなか動いてくれないと言われる警察を頼ることもできない。

 結局、効果の有無は確認できずとも、置いておかないと不安でしかたがないのである。