「知らない人について行ってはいけません」

 候補者の中に知り合いが居なければ、誰にも投票できないという人も存在するらしい。生徒会選挙でもあるまいに。

 まともな神経ならば何もかも捨て去って雲隠れしたくなるほどの醜態を晒したような人物が平気な顔で再度立候補していて、そもそもまともな神経ならばあれほどの醜態を晒すことすらないわけだが、そのような人物でさえ100以上の票を得て、時として再選を果たすのが現実で、いったいどんな連中が票を投じているのだろうと暗澹たる気持ちにもなるのだが、かような人物の半分以下の得票数で良くも悪くも話題に上がることもなく消えてゆく候補者もおり、この人はひょっとして「知り合いが居なければ投票できない」という人物の知り合いで、投票率を下げないためだけに立候補したのではないかなどと有り得そうもない妄想を膨らませながら、候補者ポスターの掲示板が片づけられるのを眺めていた。設置時よりも作業する人々が活き活きしているように見えたのは気のせいだろう。