誰がためにカエルは鳴いていたのか

 私が小学生くらいの頃は、雨があがるとアスファルトで干からびているミミズをよく目にした。草むしり中でも、うにょろうにょろと太めのミミズが現れたりしたものだ。

 外を歩く機会が減ったことも影響しているだろうが、元気なミミズも干物のミミズもしばらく目にしていない。風の強い日は、昔より畑からの土埃が多く吹き上がるようになった。土地が痩せてきているのだろう。

 もちろん、いくら荒っぽい気性の者が多くとも、生活がかかっているのだから、近隣の農業従事者だって無計画に土地を酷使しているばかりではない。土地が死なない工夫もあれこれ思案している。しかし、荒っぽい中でもとりわけ荒っぽく雑な人間という者もいて、無農薬主義者でなくとも「いったい何を撒いたのだ」と眉を潜めるような謎の薬を撒き、自身の所有する畑を荒地に変えてしまったのが10年ほど前。件の農家は、離農した者の土地を借りて畑作を続けているものの、結局はミミズが干からびる隙すら与えぬような死の大地を増やしているだけなのではないかと、農家ではない私でさえ心配になっている。

 そういえば、カエルの声も聞かなくなった。そして、友達付き合いとして初めて同級生から借りたゲームソフトは『カエルの為に鐘は鳴る』だったなと思い出す。ついでに言えば、いまだに映画『誰が為に鐘は鳴る』を観る気になれないでいる(ヘミングウェイの原作は高校時代に読んだ)。