いちばんおおきなからす

 4歳くらいの頃、庭でカラスの羽を拾った。鳥類に特別な興味を持っていたわけでもない4歳児が、カラスの詳しい生態や身体構造などを理解しているはずもなく、家の電話の傍に置いてあった赤い羽根(赤い羽根共同募金のアレ)よりはるかに立派で大きく禍々しいそれを見て、何か巨大な怪鳥が近くを飛びまわっているのではないかと恐怖さえ感じた。

 幸いにも、それがカラスの羽であるという知識をその日のうちに脳に収めることができたのだが、なぜだかそれ以来、驚くほど大きなカラスと出くわしてみたいという謎の願望が芽生えた。しかし、2023年6月現在、満足のいく大きさのカラスに出くわしたことはない。

 もっとも、テレビゲームの世界でなら、「おおがらす」と名乗るモンスターに何度もエンカウントしている。『ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…』の話である。私はオリジナルのファミコン版ではなく、スーパーファミコンへの移植版が初プレイだったので、奴との初対面時には小学5年生になっていた。そして、プレイしたことのある方なら分かると思うが、この「おおがらす」は人間の頭蓋骨の上に立った状態で現れる。だが、頭蓋骨との比較から考えると、それほど大きいわけではないように思える。頭蓋骨ではなく、木や地面に立っていれば、おそらくちょっと大きめなだけのカラスであり、あまりモンスター感はないはずだ。「おおがらす」をモンスターたらしめているのは「おお(大)」の部分ではなく、どこからか掻っ攫ってきた頭蓋骨なのである。

 ゆえに私はテレビゲームという架空の世界ですら、納得のいく巨大なカラスと出会っていないのである。