リンゴの木の下でカボチャを育てる

 祖母の家に行くと、大抵2、3個のカボチャが玄関に置いてある。庭で栽培しているものなのだが、祖母の家だけでは食べきれず、よくもらってくる。

 カボチャの栽培は比較的簡単なようで、それゆえに第二次大戦中の日本では「欲しがりません勝つまでは」などの標語に混じって「なにがなんでもカボチャを作れ」なんてものが存在したのだろう。父は子供の頃、ゴミ置き場で勝手に育っていたカボチャを見たことがあるらしく、結構ほったらかしにしていても、好き勝手に陣地を拡げていくのかもしれない。

 そういえば、神奈川で一人暮らしをしている時、アパートの敷地内でカボチャが育っていた。これもまた、どこからか運ばれてきた種が、ひとりでに成長したものだったのだろう。もっとも、いくら食うに困っても、そのカボチャを調理する勇気は、潔癖症の気のある私には持てなかった。

 余談だが、ある知人は、親戚が毎年大量に送ってくるリンゴがいつも処理しきれず、腐ってしまった数個のリンゴを何年も庭に埋めていたそうなのだが、残念ながらいまだにリンゴの木は育たないらしい。よくキツネが掘り返して食っていたそうだが、そのキツネによって運ばれたリンゴの実がどこかで新たな命を育んでいたりはしないものだろうかと考えたりもするらしい。