2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「目には目を」と言われても、相手の目がどこにあるのかわからない

画像生成AIで作られた水害のフェイク画像がTwitterで拡散され、見抜くのが困難になってきたと恐れる声があるかと思えば、「この程度のフェイク画像が見抜けないでどうする」などとマウントを取りたがる者も現れ、毎度のごとく色々な意味でうんざりとさせられ…

日本でいちばん長く感じる日

MLBで試合時間短縮のためのルール改善があるらしい。日本野球よりは見ていられるとはいえ、基本的にスポーツ全般に詳しくないため、これまでにも試合時間を短くするようなルール改定が行われてきたのかどうかは知らないし、日本とアメリカそれぞれの平均試合…

「0○さん、たぶん私はあなたが嫌いだ」

私はたぶん“あなた”が嫌いです。 “あなた”が私の暮らしにずかずかと入り込んで来てからというもの、私的なことまで含めると数えきれないほど、いや、数えるのが嫌になるほどの頻度で“あなた”を見聞きしなくてもすむ世界へ逃げ出したくなる衝動に見舞われてい…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(73)(完)

Tの亡骸を過ぎると、ひび割れたアスファルトの道路に潰れた柿の実が点々と転がっていた。この土地には柿の木などないはずだが、海を挟んだ土地の柿を吸い寄せてしまうほどの事態だったということだろうか。柿は苦手なので勿体ないとは思わないが、Tの家の白…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(72)

人間よりも食物を重視した設計なのか、身体を押し込めた地下収納では、外部の音がほとんど聞こえず、竜巻はおろか家がどんな状態にあるかさえ把握できなかった。Steve Reichの「DIFFERENT TRAINS:America‐before the war」ならば脳内で正しく再生できるので…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(71)

失った前髪を隠すように一日中耳あてを着け続けたマサ君に珍しくも同情していた日、西の畑に竜巻が発生しているのが見えた。すぐに自転車で逃げることにしたが、上級生は今さら遅いと笑った。そもそも、彼らは竜巻が成長することを知らず、今まさに成長し始…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(70)

しかし、ある意味では猫肉買取店があった方が良かったとも言えるだろう。ヤスヒロは2歳の春まで住んでいた家で撮られた唯一の写真を見るたびに、喉の奥が詰まる思いに苛まれているからだ。夜中、まだ眠そうな母親を起こして、件の手押し車の玩具を押して遊ぶ…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(69)

爪に葉の欠片が詰まるほど強い力で地面をむしり、怨み言の後に必ずやってくる幼少期に迷子になったような寂しさはいくら頭を強く振っても打ち消すことができないとわかっていたので、祖母の土地で最も綺麗で控えめで郷愁を誘った苺畑のような景色を求め、現…