すぱいだーぱにっく

 私は、蜘蛛が苦手である。

 地面をただ這い回るだけの蜘蛛ならいいのだが、糸を吐き、巣をつくり、視線の斜め上あたりで待ち構えている奴等はどうしても好きになれない。絶滅してくれたらいいのに、と思う。

 苦手になったきっかけは、おそらく幼き日に見た特撮番組だ。戦隊もの、たしかバイオマンターボレンジャーのどちらかだったはずだが、蜘蛛の怪獣みたいなのが出てきて、街中に普通サイズの蜘蛛をばらまくのだが、その普通サイズの蜘蛛はサイズが普通なだけで中身はちっとも普通じゃなく、人間を糸でぐるぐる巻きにして動けないミイラ人間のような姿にしてしまうのだ。幼き日の美月さんは、そのぐるぐる巻きにされた人々の姿にたいへんな恐怖を感じていた。『カメラが捉えた決定的瞬間』は平気で観ていたのに(同じ目に遭うのはごめんだとは思っていたが)、この化物蜘蛛と化物蜘蛛の糸に巻かれた人々は、見るのも嫌だった。病弱だった幼い美月さんが入院中に放送されたもので、親が気を利かせてビデオに録画しておいてくれたのだが、一度見たきり二度とそのビデオは再生されることはなかった(記憶が曖昧なのは、それ故である)。

 この時点で、普通の蜘蛛にも恐怖を感じていた幼少期の美月さんであるが、その直後にNHK教育で放送された芥川龍之介蜘蛛の糸』の人形劇を観てしまい、「おっかないのに殺すのも駄目なのかよ、なんだよこの生き物は」と更に苦手になった。

 苦手すぎて、油断している時に遭遇すると、半分パニック状態で距離をとろうとするため、転んだりぶつかったりして怪我をしたことも少なくない。番組の制作陣は、どう責任を取ってくれるのだろう。

 ちなみに、蜘蛛に対しては、これだけ怯えていながら、芋虫類とかミミズとかは平気である。むしろ、ちょっと可愛いとさえ思う。おそらく、そこそこの農業経験があるからだろう。芋虫やミミズを恐れていては、畑仕事などできない。

 (笑)をつけたくなるような程度の知識と覚悟で「スローライフ」だの「昔ながらの生活を」だのと言ってる人は、仕事内容のキツさや金銭的な問題といったこともそうだが、これらの虫くんたちと平和な関係を築けるのだろうかという疑問もある。


 そういえば、どこだったか忘れたが、蜘蛛同士を戦わせる蜘蛛相撲みたいなのを地域の伝統にしている場所が日本にあって、そこでは強そうな蜘蛛を見つけると捕まえて家の中で飼育しているらしい。そこに生まれなくてよかったと心から安堵する。

スパイダー・パニック [DVD]

スパイダー・パニック [DVD]