黄昏の1995年にも楽しみは必要だった(悲しいほど青かった空)

 1995年は、もう21年も前のことになってしまった。阪神大震災があり、ニュースがオウム真理教関連の話題で埋め尽くされ、フランスが核実験を行い、今になって思い返してみると、オクラホマシティ連邦政府ビル爆破や韓国の三豊デパート崩壊といった大事件ですら影が薄くなるような有様だ。『新世紀エヴァンゲリオン』の放送開始と社会現象化も重苦しさに拍車をかけ、全盛期だった小室サウンドだって、そこかしこに妙な暗さを感じたりもした(たとえば、もし『WOW WAR TONIGHT〜時には起こせよムーヴメント』をただの明るい歌だと思っている人がいるとしたら、その人とはあまり話が合わないと思う)。

 それでも人間には楽しみが必要だ。必死で重苦しさを消し去ろうとしているのか、本当に底抜けに明るいのか(ちなみに『水曜どうでしょう』の放送開始は、1996年だ。後にノストラダムスに真っ向から立ち向かう「世界は終わらない」というテーマの「世紀末大革命恋愛大皿」なんてものも番組に登場しますが、それはまた別の話)、とにもかくにも、ノストラダムスの予言した人類の終焉まであとわずか、あるいはいとうせいこうが『噂だけの世紀末』で出口が塞がると予見した2001年も目前という時代に(1999年には大したことが起らなかったのに対し、2001年には、あの米同時多発テロが発生しているので、予言者としてはノストラダムスよりいとうせいこうさんのほうが正しかったのかも……)、『エヴァ』の終末めいた青空とは違う、私のような生まれついての日陰者には、ちょっと眩しすぎて、こじらせれば不快に感じもしたであろう、今で言うところの「リア充全開」な青空が似合うお兄ちゃんたちがいた。

 SMAPだ。1995年に発売されたアルバム『Cool』(フライング的に前年の末には発売されていたはず)と『SMAP 007〜Gold Singer〜』は、今も私の部屋のCD棚のとりやすい位置に保管されている。『SMAP 007』は『ミュージックマガジン増刊号 THE GROOVY 90'S 90年代日本のロック/ポップ名盤ガイド』でも紹介されていた。小学3年生から4年生になろうとしていた当時の私は、はっきり言えば、ファンだったわけではない。上級生の女子たちが夢中になっているお兄ちゃんたち(何度か述べているように、小学校時代の私の同級生に女子はいなかった)に私も同じように惹かれるなんて恥ずかしいとも思っていた。読むマンガはつげ義春筋肉少女帯にハマりはじめていた小学生にとっては、なおさらのことだ。いや、こんなふうに書くと、恥ずかしかったけれど、実際のところは夢中になっていた、という話だと思われそうだが、それはちょっと違う。でも、まったく魅力を感じなかったかといえば、それは嘘になる。

 まだ子供だったせいもあるだろうけれど、あの頃のSMAPに悲しさや重さなんて微塵も感じなかった。森君(どんなに年上でも、みんなSMAPのメンバーを君づけやちゃんづけで呼んでいた)が脱退した時でさえ、残念ではあっても、暗い話だとは思わなかった。頑張ることを押しつけてくるような歌は当時から嫌いで、中島みゆきの『ファイト』でさえ好きになれなかったのに、SMAPの唄う『がんばりましょう』をうっとうしく感じたことはなかった(ただし、『世界に一つだけの花』はあまり好きではない)。1998年の『夜空ノムコウ』は明るい歌では決してないが、SMAPが暗くなったとは思わなかった。

 なにが悲しいって、時代そのものが中二病のようだった90年代に、日陰者の私にさえ「あ、ちょっと楽しそう」と思わせてくれた、あのお兄ちゃんたちが、今になって暗さと重さの象徴のようになってしまったのが悲しい。そして、「たいしてファンではない」とか「興味はない」とほざきつつ、ある種、芸能リポーター以上に下品な形で「笑いのネタ」にしている連中(そういう連中に限って、普段はテレビワイドショーを批判していたりするのだから始末におえない。やっていることはほとんど一緒じゃないか。だから「ネットイナゴ」なんて呼び名を自称するのだろう)が見たくもないのに目に入ってくることが我慢ならない。私が欲しい「楽しみ」はそんなものじゃない。芸能界が綺麗な場所じゃないなんてことは分かっている。けれど、いつか、それらも踏まえたうえで、「まあ、色々あったけど、今は割と楽しくやっているよ」と思わせるような姿を見せてほしい。1995年は、ビートルズが25年ぶりの新曲を発表した年でもあるわけだし。


TOKYO No.1 SOUL SET - 黄昏'95 @ スチャダラ2016 〜LB春まつり〜


The Beatles - Free As A Bird

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