夢の中の見知らぬ友人たち

 友人は多くない。数少ない、友人と呼ばせてもらえれば嬉しい人たちだって、本当に「友人」だと書いてしまうと「おめえを友達だと思ったことなんかねえよ」と言われてしまいそうなので、なるべく「知人」と表記するくらいである。

 しかし、いや、それゆえか、夢の中で出会った見知らぬ友人の数なら多い部類に入るのではないかと思う。実際には話したこともないどころか、目覚めてから必死に頭をひねっても、せいぜい「強いて言えば容姿があの人に近い」程度のことしか出てこないような友人たちである。しかも、「容姿が近いあの人」は知り合いではなく、著名人だったりする。

 胡蝶の夢のごとく、あちらの世界が現実であればどれだけ良いだろうと思うほど、彼・彼女らとの関係は良好だ。私は見知らぬ友人たちの名前も知らないし(見知らぬのなだから当然と言えば当然だ)、見知らぬ友人たちは私のことを馴染みのない愛称で呼んできたりもするのだが、あちらの世界の私たちはたいへん幸せそうだ。どんなに優秀な探偵を雇っても、こちらの世界であの友人たちと再会できないのが悲しい。

 だが、ほぼ無意識とはいえ、私という人間の想像力などたかが知れているという気もするので、この地球のどこかに、夢の中の見知らぬ友人たちとそっくりな誰かが存在しているのではないかと考えることもある。しかし、この世界の私は、夢の中の見知らぬ友人たちが親しく接してくれるほど魅力的な人間だとは言い難いので、結局、あの素敵な友人たちを「友人」と呼べることなどないのだろうと思い、今日も冷水で顔を洗う。