来なくてもいいのに勝手に来やがったんだから少しは良い思いさせなさいよ、2020

 年齢のせいか、はたまた時代のせいか、新年というものがさっぱり嬉しくなくなってしまって久しいが、来なくてもいいのに奴は勝手にあがりこんでくる。正月飾りがあるじゃねえかとおぬかしやがるが、それは福の神さまたちへのものであって新年氏に対してではないのである。歓迎してほしかったら、少しはこちらの気分が良くなるような振る舞いをしてみせなさい。

 しかしながら、相手は実態の見えない新年氏。ぶとうが蹴ろうが私の手足が空を切るばかり。しまいには勢い余って壁にぶつかり、こちらが怪我をしかねない。やまたのおろちの退治法に倣って、酒でも大量に流し込んで前後不覚になったところを後ろからバッサリというわけにもいかず、一年間はこやつの機嫌をうかがいながら過ごさねばならない。ごくまれに気の良い新年氏も居られるようだが、すぐに腹の底を見せてくれる相手ではないため、付き合い終わってみなければどうにもならない。しかし、勝手にあがりこんでくるような輩にそんな気の良い相手など本当にいるのだろうか。非常に疑わしく思っているのだが、それを悟られては「そういうおめえさんの性根が気に入らねぇんだよ」などとつっかかってくることだけは容易に想像できるので、こちらは愛想笑いでも浮かべているほかないのである。

 そうは言っても、そろそろ我慢の限界でもある。やい、2020年氏。ちょっとは良い思いをさせなさいよ。

 というわけで、はじめまして2020。今年もどうか無事に。

もつれっぱなし (講談社文庫)

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