ハマちゃんとスーさんが「景色」に変わる時

 「途中で眠ってしまっても目覚めた時に目に映るのは、眠る前と同じような水びたしの場面」という点だけで言えばアンドレイ・タルコフスキーの映画と『釣りバカ日誌』は共通しているのではないかと考え、ではタルコフスキーが『釣りバカ日誌』を撮ったらどんな映画になっていただろうと思いを巡らせると、どうしても『水曜どうでしょう 激闘!西表島』での伝説の寝釣り場面が邪魔をしてくる。まあ、嬉野さんは「どうでしょう」でカメラを回すにあたって、小津安二郎を参考にしていたという驚きの事実もあるので、やっぱりこれらの作品はそう遠くない位置にあるんじゃないかと。思えば、バスの車内で鑑賞した『釣りバカ日誌』によって「逆浦島現象」を観測(?)したのも『水曜どうでしょう』であった。

 タルコフスキーの名作『ノスタルジア』の主人公が「蝋燭に火を灯し、広場の温泉を渡りきることが出来たら、世界は救済される」と聞かされ実行したのに対し、私が閉校した母校の野ざらしになっているプールの中で蝋燭に火を灯し、三往復できたら小学校時代の怨みを晴らせるという謎の妄想を抱いている話は以前ブログに記した。いまだに実行していないし、怨みも晴らせていない。しかし、それで怨みを晴らすことができたとしても、その後の世界は他人も自分も含めた全てがただの「景色」になっているような気もして、少々恐ろしくもある。それはそれでタルコフスキー的な光景が広がるわけだから、見てみたいという願望もあるのだけれど、同じ終末感に満ちた映像美ならば、デレク・ジャーマンの『ザ・ラスト・オブ・イングランド』により惹かれるので、野ざらしプールに忍び込むことはまだなさそうだ。

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