衝撃映像の定番である牛追い祭りの映像で、老夫婦が荒れ狂う牛に突き上げられる様子を見たことがある。
古くから伝わる祭りというと、どうにも若者は姿を消し、老人ばかりが目立つというイメージを持ってしまうが、少なくとも「牛追い祭り」に関しては、そういったイメージはなく、むしろスペイン人の熱すぎる血を冷やすための必要措置なのではないかとさえ感じる。素人闘牛なんてものもあるらしいし。一応、正闘牛士であるマタドールは「神の使い」とも呼ばれているようだが(ところで、牛が赤い布に興奮しているわけではないというのは有名な話だが、ウィキペディアに「むしろ、赤い布で興奮するのは闘牛士の方である」という一節があって、不覚にも少し笑ってしまった)。
さて、もし牛追い祭りも、多くの廃れ行く祭りのように、老人ばかりが目立つものだったとしたら、それはもう酷く荒っぽい姥捨て山のような世界になっていることだろう。木下恵介や今村昌平ではなく、70年代あたりのロジャー・コーマンが喜んで映画にしそうな世界観だ。
牛追い祭りや闘牛、あるいはロデオなんかで牛や馬に突き上げられたり蹴り上げられた人間の姿は、それこそ衝撃映像のナレーションでもよく言われるように「まるで人形のような無機質な動き」だったりする。出来の良くないドラマやフェイク映像だらけのショックドキュメンタリーでは、転落する人間の関節があり得ない方向に曲がっているお笑い映像のようなシーンがあったりするものだが、しかし“いかにも作り物”でありながら、妙に生々しさを感じさせるものもあって(ビザール系ホラー映画のやけに作り物めいた血糊などにも通じる)、コーマン映画の一部にも、そんな瞬間は存在する。タイムトラベルが可能なら、この企画をコーマン閣下に提案してみたいものだ(ただ、面白がってくれたとしても、「よし、お前に監督させてやる」とか言われて、無茶な環境で働かされそうな気もする。前にも言いましたけれど、映画撮影なんて野蛮なこと、わたくしにはできませんことよ。おほほ)。
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博士を狂わせた研究は ルイス博士が継いだのさ
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