書も町も踏み込むことが出来るだけで幸運だ

 私は“ひきこもり”の専門家ではないし、精神科医でもなければ評論家でもない。しかし、原因がどんなものであれ、“外へ出る力を失った”状態であることは確かなのだと思う。

 社会や周囲の人間の側に大きな問題があるのであれば“外へ出る力を奪われた/潰された”というべきなのだろう。あるいは、「うつは甘え」なんてことは思ってもいないし、そんな考えの人間は激しく軽蔑もしているが、仮に本人の側の問題が大きいのだとしても、先述の通り“外へ出る力を失った”状態であることに変わりはないはずだ。

 ゆえに、単に「外へ迎え」だの「行動しないと駄目」などという意見は、それができるのなら、そもそも“ひきこもり”とは言えないのではないかと思うし、「うつは甘え」と同じくらい雑な考え方だとも思う。たぶん、こういうことを平気で言えるような人間が、(『相棒Season10 第15話「アンテナ」』での右京さんの台詞を借りれば)“アンテナの感度”が高過ぎる人の外へ出る力を奪っているのだろう。

 そんな言葉を、以前、マンガをたくさん読んできたと自負するようなことをツイートしていた人が言っていた。私はもちろん「マンガを読むとバカになる」なんてことは思っていないし、言うつもりもない。むしろ、「マンガをたくさん読んできたはずなのに、なぜこんなに雑なことが言えるのだろう」と思った。

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