将来が不安になる夢

 歯がぼろぼろと抜けてしまう夢をたまに見る。年に数回、歯医者の定期検診に向かい、一説によると「親以上に誉められることが少ない存在」と言われる歯医者さんから「よく磨けていますよ」とお褒めの言葉を頂いているにもかかわらず、どうしてこんな冷や汗の流れる夢にうなされなければならないのだろう。

 今は、なんとかお褒めの言葉を頂いているが、遠い将来には、正夢となって、私の歯もぼろぼろと抜け落ちてしまうのだろうか。しかし、夢の中での歯の抜け方は、ある日突然、何本もの歯が立て続けに抜けるというもので、着々と進行した虫歯や歯周病によって徐々に抜けていく、といった感じではない。昨日まで大丈夫だった歯が、今日になって何本も……という恐ろしい状態なのだ。

 それに、夢の中の私は、遠い将来の老いた姿どころか、転べば泣き、驚けば泣き、油断をすればお漏らししかねないほどのお子様だった頃の姿である。ゆえに、大人になってもパニックになりかねない事態に直面し、「おとうさーん!おかあさーん!」と泣いている時すらある。

 まあ、老いるということは、子供に戻っていく形にも似ている場合があり、ひょっとしたらそういうことなのかもしれない。実際、夢の中では、必死に父や母、あるいは祖母や祖父を呼んでいるのだが、誰も助けに来てくれない。

 とりあえず、歯は毎日磨こう。丁寧に。悲惨な将来を迎えないためにも。