詩考錯誤

 オリンピックを熱心に観戦するという意欲が欠落しているため、カーリングの話題がニュースなんかで流れてきても、ほぼ聞き流してしまっている。「地元なんだから少しは興味を持ったらどうだ」という指摘もありそうだが、地元だからといって興味を持たなければいけない理由もわからないし、そもそも「北海道」という括りだけで地元と言われても少々困る。北海道はでっかいどうなのだ。カーリング女子代表選手を輩出し、パレードも行われた北見と私の在住地もそれなりの距離があるし、道のりも面倒なのでそう簡単に足を運べる場所ではないのである。だが、六花亭(私の在住地でもある北海道・十勝地方の老舗菓子メーカー。『水曜どうでしょう』の「十勝二十番勝負」において、帯広市でミスターが食わされていた「青梅」という菓子も六花亭の商品である)が「そだねー」を商標登録出願しているというニュースには、私の琴線も微かな反応を示した。

 とは言っても、このニュースそのものに何か意見を述べたいわけではない。商標を独占するつもりなのかという疑いからのクレームや、かつて中国に「六花亭」という名前を先に登録されてしまったことから、「そだねー」のブランドイメージを企業が守ろうとしているのだろうという意見など、いろいろ騒がれているようだけれど、そういった点に関して六花亭の関係者でもない私からは特に何も言えない。私の琴線が微かな反応を示したのは、単に六花亭に関する私個人の思い出によるものである。埃の被っていた思い出がニュースが飛び込んでくるときの風によって少しだけ綺麗になったとでも言うべきか。

 六花亭の前身である帯広千秋庵が1960年から発行している『サイロ』という月刊児童誌がある。この雑誌には、地元の子供たちの詩が掲載されているのだが、私の書いた詩もかつて掲載されたことがあったはずなのである。

 「あったはず」。なぜ、そんな不確かな言い方になってしまうのかというと、いかんせん小学校1年時の授業で適当に書いた(書かされたと表現したほうが正しい)詩なので、思い入れがまったくなかったため、当時の私がオリンピックの話題以上に詳しい話を聞き流してしまったからである。

 また、同じく六花亭が発売しているクッキー「リッチランド」の包装紙にも子供の詩が載っており、これが『サイロ』にも載ったものの転載なのか、独自の選考なのか今だに私はよくわかっておらず、さらに、そういえばラジオかなにかで朗読されたというようなことも聞いたような気がして、はたしてどれが正解なのか、今となってはさっぱりわからない。

 そもそも、『サイロ』にせよ「リッチランド」にせよ、児童数の少ない私の母校にも他に何名か掲載経験者がいたので、十勝っ子にとっては、そう珍しいことではなかったはずで、私と同じ時期に詩が上記のいずれかに採用された知人にいたっては、中学の時点で自分の詩が選ばれたことすら忘れていた。

 今でこそ私は、たいして好きでもない食品の袋でさえ、妙なコレクター魂に掻き立てられて洗って保存してしまうのだが(六花亭の商品の袋もたくさん保存してある。味としては好きなものもあれば、苦手なものもある)、小学校の頃からそこまでの熱心なコレクターだったわけでもない。周りの人々も、菓子そのものは喜んでも、それを包む袋はすぐに捨ててしまっていた。だいたい「リッチランド」はチーズが練り込まれたクッキーなので、チーズ嫌いの私はどう頑張っても食えない商品なのだ。『サイロ』はバックナンバーを調べることもできるだろうが、「リッチランド」の包装紙に関しては、調べるとなると、かなり困難な道のりになることであろう。

 余談だが、「リッチランド」に掲載された詩には、クッキーの包装紙に載せるにもかかわらず「うんち」という題の詩が採用されたこともあり、『VOW』で紹介されたこともある。まあ、私の詩も「うんち」と同列のものであったということかもしれない。

ベスト オブ VOW

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