三題噺『それは本当のことだから』、他

(三題噺/テーマ【火傷】【嘘】【ターゲット】 )


『それは本当のことだから』

 男には奇妙な能力があった。
 男の嘘を信じた者の顔に火傷を作ることができるのだ。
 その火傷は痛みはないが、消えることもない。
 男はその能力を様々に用いてきた。
 
 今回のターゲットは少女だ。
 男は少女に恋をしていた。
 男は自分の能力で少女をモノにしようと企んだ。
 少女の顔に火傷を作り、他の男を寄せ付けなくさせ、自分は少女に優しくし、良い仲になろうと考えたのだ。
 男はいつものように少女に嘘を信じ込ませた。
 そして、少女の顔には大きな火傷が出来た。
 
 しかし、男は火傷の出来た少女の顔を愛せなかった。
 落ち込む少女に優しく接してはいたが、やはり愛せなかった。
 しばらくして、少女は男に告白した。
 男はそれを拒絶した。
 悲しむ少女の顔にそれ以上火傷が出来ることはなかった。

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 呟き散らかしたことと、呟き散らかそうと思ったことのまとめ


 26歳になって一週間以上が過ぎた。
 映画を志す者は、歳をとるごとに「もうベルトルッチはデビューしてたじゃないか」「ハーモニー・コリンもデビューしてたじゃないか」などと考えて焦燥感に駆られるのだが、映画についてあれこれ考えるのがちょっとだけ好きなだけの美月雨竜氏は、そういったことでは焦らない。美月雨竜氏が考えるのは「ああ、26歳っていったら、『ハナタレナックス』が始まった頃の音尾さん(音尾琢真)だなあ」とか「大泉さん(大泉洋)はちょうど、アメリカ縦断させられてた頃かなあ。今の自分にあんな軽妙なトークができるだろうか…」といったことである。
 26歳の美月雨竜氏は、軽妙なトークどころか、自分の誕生祝いの席で、ちっとも会話に交れずほとんど黙りつづけ、その時の悲しさと辛さと情けなさをいまだに引きずっているような弱すぎるメンタルと低すぎるコミュニケーション能力しか持っていない。しまいには「みんな、もっと気を使ってくれりゃいいのに」などと考え、そんな事を考える自分にまた嫌気が差し、ずぶずぶと沈んでいっている。

 そんな沈みがちな美月雨竜氏に追い打ちをかけるように、大嫌いなオリンピックが開幕した。その前から、もっと嫌いな甲子園もやっている。凹んだままの美月雨竜氏の精神などお構いなしに、現実でもネットでも、それらに関連した話題が飛び込んでくる。耐えかねた美月雨竜氏は、ネットとの関わりを一時的に減らすことに決めた。そして、現実においても、基本的にイヤホンで音楽を鳴らし、外界を遮断して仕事にうちこんでいる。そうしないと辛いからである。
 以下は、ツイッターから一時撤退する直前に、美月雨竜氏が遺した言葉である。

 「ツイッター、やっと入れるようになったか…。でも、どんどんTLがオリンピックの話題で埋め尽くされていのだろう。鬱陶しい。7月に入ってから嫌なこと続き。不満を吐き出さなきゃやってられないけど、しばらくツイッターは眺めることすら苦痛になりそう。日記に呪詛を書き殴る。よかったですね、皆さん。今度こそ本当に私はしばらくいなくなりますよ。出てきてもブログ更新のお知らせくらいです。皆さんの興味のない話題でTLが汚されることもしばらくはないでしょう。よかったですねえ、これもオリンピックのおかげですねえ、アンチ美月の方はオリンピックに感謝ですねえ。さあ、どうぞ、いつも以上に私の嫌いな話題で盛り上がってくださいませ。特にわざわざ私に向かって「おめえ呟きすぎ、つまんね」とか「コメント多いんだよボケ」とか言ってきた方々は、心置きなく勝手に楽しんでてください。ただ、覚えておいてください。オリンピックが終わる頃。どこからともなくナパーム弾の香りと共にドアーズの「ジ・エンド」が聞こえてくるでしょう。そして、その異様な空気にあなた方が少し静かになった時、今度は遠くからヘリの音と「ワルキューレの騎行」が聞こえてくるでしょう。それが最期です。」

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 生協さんが来た。担当者が変わったのか初めて見る人。私が具合悪そうに応対してると心配してくれた。「ちょっと寝不足で」と答えたら「あ、なでしこですか?」と言われた。日本が銃が手に入りにくい社会で良かった。危うく殺人犯になるとこだった。
 十世代かかっても使いきれないくらいの金額を見返りに提示されれば、さすがに最初から最後まで試合を見てやってもいいと思う。そのくらいスポーツは嫌い。


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 『オモヒデ オーヴァ ドライヴ』を聴いた時は、ポール・マッカートニー山本精一のプロデュースで登場した天才少年という印象を受け、そのうちエイフェックス・ツインとボグダン・ラクチンスキーが喧嘩しながらプロデュースした天才詩人兼シンガーという印象へと変わり、それが最近はそういった要素をすべて昇華したうえで遂にマーヴィン・ゲイフェラ・クティのようなソウルミュージシャンへとたどり着いたという印象。

リトルメロディ

リトルメロディ


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 映画学校同期の真子晃君が脚本を担当したラジオドラマ『13日の金曜日VS引きこもり』の後日談的というかIf的な小説を昨年の2月下旬から3月上旬にかけて掲載したのだが、色々あって第3話以降を掲載することができなかった。
 一年以上の時を経て、次回ようやく第3話を載せることにしました。
 まあ、続きを気にしていた人なんて殆どいないのでしょうけど、中途半端にしておくのも気持ち悪いし、こんなものでも数名の優しい方が「つづきが読みたい」と仰ってくれたのもので。
 ちなみに、第1話、第2話は以下のURL。

http://d.hatena.ne.jp/uryuu1969/20110216/1335612080
(『元・引きこもりの13日の金曜日VS悪魔のいけにえ語り部 死神〜』第1話)


http://d.hatena.ne.jp/uryuu1969/20110305/1335611759
(『元・引きこもりの13日の金曜日VS悪魔のいけにえ語り部 死神〜』第2話)