お前科オジチャン

 小学校時代の同級生・ジェリー君(仮名)のオヤジさんは私の父とも長い付き合いで、私もジェリー君と初めて顔をあわせるよりも前からオヤジさんのことは知っていた。しょちゅう、憂歌団の歌を口ずさんでいる愉快なオヤジさんである。

 そんなジェリー君のオヤジさんは、かつて賭博でしょっぴかれて前科持ちだったにも関わらず、私とジェリー君が小学校に入学した頃はPTA会長を務めていて、それは当時の地元のおおらかさといい加減さを象徴してもいたのだろうが、誰に頼まれたわけでもなかろうに一部の青年団を中心とする連中が強引に推し進めていたスケート指導にちょっと苦言を呈した途端、前科のことには何も言わなかったはずの連中がああだこうだと文句を言い始め、オヤジさんもうんざりして会長の座を放り棄てた。このことは、いまだに私がスポーツというものに対して嫌悪感を抱き続ける要因の一つでもある。

 私たちの通った小学校は児童数の減少ですでに閉校してしまったが、最後にPTA会長を務めていたのは、どうやらあの時のスケート指導推進派の一人だったらしいことを最近になって知った。閉校も閉校後の小学校の敷地内が荒れ果てているのも、きっと奴のせいなのだろうと、呪いの言葉を吐きながら氷上を蠢いていたかつての子供達は勝手に判断している。

 そういえば、ジェリー君のオヤジさんがPTA会長の座を放り棄てた直後に赴任してきた校長というのも、なんとも感じの悪い爺さんで、数年前に某スーパーマーケットの入口付近で抜け殻のような顔をして突っ立っているのを目撃したと思ったら、すぐに地元新聞のお悔み欄に名前が載った。葬儀に知人が参列したという話は今なお聞かない。

 

生聞59分 (紙ジャケット仕様)

生聞59分 (紙ジャケット仕様)

  • アーティスト:憂歌団
  • 発売日: 1999/08/15
  • メディア: CD