最大公約数で選ばれた最も苦手なもの

 繰り返し述べておきたいことだが、至上主義的な振る舞いというのは概ね他人にとって不快に映るものである。もちろん、自分の好きなものの素晴らしさを伝えたい、誰かと共有したいと思う気持ちは理解できるが、かえってアンチを増やすことにもなりかねない。私など、仮にどれだけ低姿勢且つ熟考を重ねた論理的名解説を書くことができたとしても、「てめえみたいな人間が薦めるものなんて、それだけで不愉快極まりないね」と言われてしまう恐怖を拭い去ることは不可能だろう。

 逆に言えば、軽々しく「本当の名作」だの「真の名作」だのと口にできる者は、それだけ自己肯定感が高いということなのだろうけれど、どちらかといえば「自分を信じて疑わない自分至上主義者」のようにも思え、それこそ「てめえみたいな人間が薦めるものなんて、それだけで不愉快極まりないね」と感じてしまう。自己肯定感が著しく低い人間の僻みでもあるだろうけれど。

 しかし、そういった“自分至上主義者”たちの挙げる「本当の名作/真の名作」が、恥ずかしげもなく「本当の名作/真の名作」と呼べるほどの作品に思えたことはほとんどなく、彼ら彼女らの審美眼に疑いを持つと同時に、絶望的なほど自分が一般社会から解離しているのではという恐怖にも苛まれ、なんなら“自分至上主義者”たちから、じわじわと虐殺されているような気分にすらない。まあ、これもまた、自己肯定感が著しく低い人間の被害妄想と言われてしまえばそれまでなのだろうけれど。

みんな死ね

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