虫だってあざとくて何が悪いの?

 どうやら今季はテントウムシの姿が多い。基本的に見た目にも生態的にも害のない彼らだが、あまりに大量発生されると結局は害虫扱いになる。むやみに退治するのも気が引けるので、「ちょっと多い」程度で活動してくれることを祈る。

 しかし、テントウムシを手で叩き潰すのを躊躇するのは、彼らの見た目や益虫的生態のせいというよりも、叩くには感触が強すぎるのと残る死骸の量、そして少々臭い汁のせいであろう。この点だけ見れば、蚊よりも害は大きい。もしもテントウムシが人の血を吸い、耳元で嫌らしい羽音をたて、不規則な飛び方でいらつかせ、しかもやたら素早く、姿ももっと不快なものであれば、蚊どころかゴキブリ並の厄介な害虫になっていただろう。まあ、これだけ嫌われる要素を足せば、「なっていただろう」などと偉そうに述べるまでもない事だが。

 歩く時のテントウムシは素早くない。どちらかと言えば、のろい。やたらと人に向かってくることもない。飛び方も軌道が読みやすい。便所や排水溝といった不衛生極まりない場所を好んでいる様子もない。実に人間にとって都合の良い虫である。ひょっとしたら、地球の支配者気取りなホモサピエンス共に駆除されぬよう、媚を売っているだけの腹黒い奴なのかもしれないが、自分の利益のために他人の利益を尊重するというのは、社会を成立させてゆくための大事な感覚だろう。だとすれば、たとえあざといだけの虫だったとしても、悪名でも名が広まる方が勝ちなどとのたまう愚か者より、よほどテントウムシたちの方が社会的な生物といえるかもしれない。

害虫女子コスモポリタン