荒野に太いホースで水をまく

テレビドラマ版『古見さんは、コミュ症です。』を観ていて、幼稚園の頃、級友と手を繋がされた時、やけに湿っていて気持ち悪いと感じたことを思い出した。おそらく、私の潔癖気味の性分が芽生えた瞬間であり、同時にどうやら自分は他人よりも手が乾燥しているらしいと気づいた瞬間でもある。以降、私の手は乾きつづけ、今では秋口になると念入りに手入れしていても、ちょっと油断するとひび割れて流血し、それこそ潔癖症の人間には見せられないような惨状を呈したりもする。手を洗い過ぎるのも原因のひとつだが、洗わずにいられるような性格であれば苦労はしないし、そうなりたいとも思わない。埃や皮脂で汚れるよりは、出血で汚れていたほうが幾分マシである。

そのうち全身が乾ききって『ウルトラマン』に登場したジャミラのような姿になるかもしれないが、100万度の高熱火炎も吐けるようになったのであれば、復讐したい対象は山ほど存在しているので、どうせこんな姿ではまともな人生など送れないとヤケになり、ジャミラ以上の破壊活動に邁進することだろう。その際は、私に恨まれている方々には存分に恐怖と苦痛を味わってもらいたい。復讐は何も生まないが、たぶん多少はすっきりする。

もっとも、姿がジャミラであれば、私に復讐されたとは気づかないかもしれない。なにやらよくわからないが、恐ろしい怪物に殺されたというだけになってしまう。それは少々悔しい。ジャミラが劇中ですぐにジャミラだと気づかれていたのは不可解だが、たぶん面影がどこかにあったのだろう。仮に私がジャミラ化しても、どこかに面影が残っていることを願いたい。