恵比寿大黒地獄篇

 アイスクリームショップなどなかったはずの懐かしき上磯瀬百貨店食品売り場の横には、売り場の商品をレジへ通す前に入店できてしまう位置関係で30年程前のサーティワンが店を構え、店の買い物籠に支払前の商品を入れたままの母子たちがチョコミントとバナナキャラメルのフレーバーばかりを頬張りながら、こちらが悲しくなるほど仲睦まじい姿を見せる。泣きたくなるような気分の私の前には、トイレで蛭子能収の漫画を読んで痔を悪化させた男が現れ、これまでの行いの禊として甘い蒟蒻を奢らされる。蒟蒻売り場からトイレへの道筋には、男が垂らしたと思しき血痕が続き、幼い頃にデパートの遊び場で私を除け者にした見知らぬ幼児にそっくりな顔の子供が憎たらしいニホンザルの動きで辿っていくのが見える。夢にトイレが現れれば夜尿の危険を疑わなければならないが、まさか血便でも漏らしたかと目を覚ますも、少し嫌な汗をかいていただけで安心したが、当然疲れも眠気も解消されていない。