グシャノコウジタイトくん、母校を救う(継続中?)

 高校一年時のクラスメイトに、卒業アルバムでは、どの組のページを探しても見つからない奴がいる。

友達と呼べる者はもちろん、一日の中で会話した相手すら殆どいない日々を過ごしながらも、危険回避の意味も含め、周囲の観察だけは怠らずにいた私は、当時の息苦しい環境を覚えていたくもないのに記憶し続けているのだが、さすがに別々のクラスになった者の情報をわざわざ探る理由はない。ただ、卒業どころか入学して半年も経たずに凡庸な理由で退学した愚か者とつるんでいた奴なので、私の知らないうちに何かまたおやらかしになって退学させられたと考えるのが自然だろう。

 しかし、友達も会話も最低限以下のまま三年を過ごした私には確認する術がないし、ただ一人、なぜか私と現在なお最低限以下の交流が続いている某女史は、高校在学時どころか生まれながらに愚か者の行く末になど微塵も興味をお持ちにならない高貴なお方なので、今更高校時代の愚か者の話など振ろうものなら、私のアドレス帳から強制的に一名分の情報が抹消されかねない。ゆえに、消えたクラスメイトの謎は、おおかた想像はつくものの、正確なことは一つも分からないままなのである。

 ゆえに、想像はつくと言っても所詮は想像であり、想像し難い何かしらの事件があったという線も否定はできない。ひょっとしたら、30代も終わりに差し掛かる今なお高校生のままなのかもしれない。あるいは、母校の存続のための生贄として、1階男子便所の床下あたりに埋められているとも考えられなくはない。さすがにそれは残酷過ぎるとしても、便槽の真下に秘かに造られた棺のような小部屋に監禁され続けている可能性なら、もう少し高いと言えるかもしれない(もっと残酷か……)。

 いずれにしても、私の観察によって得られた情報と印象だけでは、愚者小路退人くん(仮名)が幸せに暮らしている様子が想像し難いのは確かである。