さようなら、ミスター・アメリカン・ライダー


映画『ラストムービー』予告編

 

 

 

 遠い遠い昔の話 映画が始まると皆が微笑んだ時代があった

 僕にもそんな機会があって 皆を驚かすことができるかなと

 ちょっとは感銘を与えられるかなと思った

 

 でも71年に大きな衝撃があった 僕が知ったのは天国の門も開いた後

 あまりの衝撃に連中が犯したことまで知った

 家から出るのも嫌になるような話

 ビリーとキャプテンが撃たれた時 泣いたかどうかは覚えていない

 でもその時何かが変わり何かが終わった 映画が終わる時が来たんだ

 

 じゃあさようなら、ミスター・アメリカン・ライダー

 僕はひとりで歩いて映画館へ行った この作品なら館内も静かなはず

 でも誰かがビールを飲んでコーンを頬張っていた

 映画が終わるなんてありえない 映画が終わるなんてありえないと

 

 幻のライオンのことは覚えている? 血の流れるフィルムなんか信じてる?

 もし霊媒師の言う通り あの校舎に神様がいたらの話だけど

 ねえ椰子の木の縫いぐるみなら信じてる?

 神様の理念は人を目覚めさせることができるかな?

 じっくり考えるにはどうしたらいいか彼らにも教えてくれる?

 

 君がシネフィルだってことはわかってた なぜって先生を招いたから

 君たち二人とも時計は捨てていたけどね あのサウンドトラックは最高だった

 僕が観たのは10にもなる前 カマドウマみたいな体勢で

 ヒッピーのヒッチハイカーやおかしな弁護士なんかを乗せたりして

 でも清らかな水が歌ったように運がなかったことはわかってる

 最後の映画はとっくに終わっていたんだ

 

 僕らは歌いだす さようなら、ミスター・アメリカン・ライダー

 僕はひとりで歩いて映画館へ行った この作品なら館内も静かなはず

 でも誰かがビールを飲んでコーンを頬張っていた

 映画が終わるなんてありえない 映画が終わるなんてありえないと

 

 何十年も好きにやってきた 怒鳴り散らしても許された

 でももう昔とは違うんだ 王や女王のために召使が民家を壊した

 ジェームス・ディーンを車ごとへこませて カメラを止めるなと叫ぶ声

 

 王が息切れを起こした隙に 茶色い缶詰が王冠を盗んだ

 今頃は缶詰の中身を網で救い取った連中を 王や女王が罵っている

 ゴジラが蒲田を泳いでいるとき 芸術村の老人が漫画ごと掃き捨てた

 僕たちは競輪場の傍で葬送曲を歌った とうに終わった映画のために

 

 僕たちは歌う さようなら、ミスター・アメリカン・ライダー

 僕はひとりで歩いて映画館へ行った この作品なら館内も静かなはず

 でも誰かがビールを飲んでコーンを頬張っていた

 映画が終わるなんてありえない 映画が終わるなんてありえないと

 

 ランナーも北へ行くような夏の日の滑り台から

 網目の住人たちは子供たちとともに向かい 天空高く昇って急降下

 かつての缶詰の前で茫然とした

 すぐに屈強な青年たちがKマートにパスを出した

 夜の街にいる最初の道化師もボールを受け取る距離にいた

 

 僅かな時間、館内は活気に満ち 軍曹の偽物もあの曲を演奏してくれる

 僕たちも急いで駆け付けようとしたけれど その場所には辿りつけない

 見飽きた奴らが劇場を1人占めしているからだ

 大衆と老人は広場を譲ろうとしない

 さて話をもどそう 何が終わったか知っている?

 明後日は最後の映画の日じゃないか!

 

 僕たちは歌い始める さようなら、ミスター・アメリカン・ライダー

 僕はひとりで歩いて映画館へ行った この作品なら館内も静かなはず

 でも誰かがビールを飲んでコーンを頬張っていた

 映画が終わるなんてありえない 映画が終わるなんてありえないと

 

 そう僕たちは幸運な息子ではない アヒルと戯れるビリーを見た世代だ

 アヒルの村の漁師が覗き仲間と一緒に去った今

 もう“俺たちの世代”なんか聴くつもりはない

 満足できないと叫んでスクリーンに突進する

 昼の迷子の声を聞き違えた奴まで突進する

 なぜか僕たちとは別の場所に向かって進んでいった

 

 思い込みが舞台を壊す様を見てたら 怒りさえ虚しく溶けてしまった

 近所で育まれた自由たちも 紅い布きれを解くことができずにいた

 かりそめの儀式を賑やかすため 霧が街中を湿らせたとき

 ジャック・オ・ランタンだけが笑うのを見た 映画はとうに終わっていた

 

 あいつは歌っていた さようなら、ミスター・アメリカン・ライダー

 僕はひとりで歩いて映画館へ行った この作品なら館内も静かなはず

 でも誰かがビールを飲んでコーンを頬張っていた

 映画が終わるなんてありえない 映画が終わるなんてありえないと

 

 「ヘイ・ジュード」が好きな女の子に会った

 彼女の後ろのピエロに楽しい報せを期待した

 でもどこか悲しそうに微笑むと階段を下りて行ってしまった

 僕にとっても大事な館に入って行った ここで昔、映画を観た

 でもオーナーは期待に沿えるものはもうかからないと言った

 

 館内では子供達が歌っていた 恋人達も声を上げていた 老人は夢を見ていた

 僕は凍りついてしまって言葉もない 座席は全部埋まっていて

 せっかく黒い水が消えてオレンジの陽光が射してきたはずなのに

 ジョナスは2019年に旅の追憶からロスト・ロスト・ロスト……

 映画が終わった日

 

 そして皆歌っていた さようなら、ミスター・アメリカン・ライダー

 僕はひとりで歩いて映画館へ行った この作品なら館内も静かなはず

 でも誰もがビールを飲んで手元を光らせていた

 映画が終わるなんてありえない 映画が終わるなんてありえないと


Don McLean performs American Pie live at BBC in 1972 - Newsnight archives

 上記拙文の元ネタ ドン・マクリーン「アメリカン・パイ」

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12月11日の段階でこの心境

 例年以上に師走らしい師走、つまりはあれこれ忙しくて体に悪いということで、ただでさえ社会の仕組み的に色々やらんといけないことが多くなるのに、別に無視しても構わないような文化的な伝統も今更ぷっつり途絶えさせるのも気持ち悪く、そのあれこれのために用意しておかなければならないものもこれまた多く、そのくせ寒いし雪は積もるし滑り易いし、なのに他の生きとし生ける者たちも忙しくなるのでどこも混雑しはじめ、せめて急用が舞い込むのは控えてほしいのに、様々な状況が命あるものだけでなく機械や道具類まで消耗させるようで、どうにもここ数日ネットが不安定で、どうやら回線の問題らしく固定電話まで咳き込んでいるかのようなノイズを微かに響かせ、なんとか騙し騙し使っているもののとても落ち着けるものではなく、しかし先程からだらだらと述べているように自分も周りも忙しいものだからどうしても優先順位を下げねばならず、ああでもいずれ何とかしないとなあ、なんて考えが脳の隅っこに居座るのがまたストレスで、たぶん近いうちにまた寝込むことになるのだろうけれど、避ける術が思いつかないので、2019年も残り僅かだが、もうどうにでもなれとさえ思い始めている。

 という心境を忙しいものだから隙を見て書き残し、ブログに予約投稿してみた次第である。

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映画の終りとハードボイルド・ワンダーランド(31年ぶりの『ラストムービー』)

 


映画『ラストムービー』予告編

 

最後の映画、映画の最後、終りの映画、映画の終り、強いては映画の死に場所

 

 拳銃を手に「ぶっ放されたくなかったらトチらず演技しろ!」と怒鳴ったなんて噂もありながら、自分自身をパロディ化したような役を「面白そう」だと嬉々として引き受けたサミュエル・フラーは、ひょっとしたら役者に拳銃を奪われて撃ち殺される覚悟すら持っていたのだろうか。はたまた役者なんぞに銃を奪われることなどないという名誉勲章三つの元陸軍軍人ならではの自信か? それでもハートマン軍曹は微笑みデブに撃ち殺されたわけだが……いや、これもまた「映画の中の話」か。

 映画に対して過剰なまでの情熱を持った者、あえて否定的な言い方をすれば「映画の亡者」。日本における「映画の亡者」の象徴といえば、やはり黒澤明だろう。「天皇」とまで呼ばれた黒澤明は、もしもそんな自分自身をパロディ化したような役どころを依頼されたとしたら、はたして引き受けただろうか。そもそもどんな役どころであれ役者の側には回らなかった気はするが、それでも撮影のために民家の二階を取り壊させたほどの映画作家の覚悟がどれほどのものだったのかは気になる。撮影後に建て直したとはいえ、それでどうにかなるものではないほどの思い入れが持主にはあったかもしれない。怨みを買って報復を受けることになったかもしれない。サミュエル・フラーが持っていたかもしれない「撃たれる覚悟」を黒澤明は持っていたのだろうか。産み落された作品たちが傑作であることに関しては異論を挟むつもりがないだけに、一人の映画ファンとしてはそこまでの覚悟の上で生きていたと思いたいが、今となってはもう確かめる術もない。

 だが、そんな黒澤明の過剰なまでのこだわりを美談として語り継ごうとする現役の「映画の亡者」たちの覚悟であれば、その気になれば確認する方法はあるかもしれない。存命の亡者たちは「最後の映画」に携わる覚悟はあるだろうか。ふと、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』のラストで「まだ終わりたくない」と嘆くジャスティス・ラブの姿が目に浮かんだが、はたして……。

 31年ぶりの劇場公開が控える故デニス・ホッパーの呪われた大傑作『ラストムービー』。配給元のユニヴァーサルに理解を得られず、ほぼお蔵入り状態だったものが1988年に再び陽の目を浴び、VHS化もされていたのは、それはそれで作品の真意が理解されていないままだったことの証だったのかもしれない。理解されていたのなら、もっと徹底的に封印されていたことだろう。ペルーで撮影される西部劇、それに影響され映画撮影の真似をはじめる現地のインディオたち、映画の目的を知らない彼らはそれを虚構だとは思わず決闘の場面は本当の殺し合いと化す……そんな内容の「真意」。実験映画風の演出は、デニス・ホッパーがカーティス・ハリントン(ケネス・アンガーとともにアンダーグラウンド映画を製作していた作家の一人。ケネス・アンガーはハリウッドのゴシップを集めた『ハリウッド・バビロン』の著者でもある)と関わりがあったこととルイス・ブニュエルへの傾倒からだろうが、ひょっとすれば配給側に真意を悟らせないための手段だったのかもしれない。デニス・ホッパーは『ラストムービー』の後、長い不遇の時代を過ごすことになるが、真意をハリウッドに悟られていたら、B級映画への出演すら閉ざされていたかもしれず、コッポラの強権を持ってしても『地獄の黙示録』にホッパーを招くことが不可能になっていただろう。

 そんな『地獄の黙示録』の撮影に関する一連の騒動を予見していたのが『ラストムービー』とも言える。そういえば黒澤明もハリウッドとは色々と因縁があった。その黒澤明に『影武者』を撮る機会を与えたのもコッポラだったか……。しかし、「時代はぐるぐる回っているように見えても、本当はらせん状になっている」と近田春夫さんも仰っていたように、コッポラの姿勢も『ラストムービー』が陽の目を浴びる意味も、その時々によって微妙に異なっているのだろう。31年ぶりの「最後の映画」はいったい何を意味するのだろう。凄い映画であることは変わらないだろうけれど。

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軽量級の重病

 少し重めの風邪をひいたため、いつも以上におとなしくしている。インフルエンザではないらしい。早めの大掃除で体力を消耗し過ぎたのが一因と思われる。

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頭が軽いと天丼も軽くなる

 以前、『タモリ倶楽部』で特集されていたが、俳優の高橋克実さんは月に2回、ヘアカットに通っているらしい。番組内でタモリさんに「切るほどのものないでしょ」とからかわれていたが、幸い(?)にも切るほどのものがまだまだある私は年に2回しか髪を切ることがない。暑い季節がやってくる直前に一回、そして一年が終わる間際に一回という調子だ。だが、通っている美容室の入口付近が、本格的な冬を迎えると非常に滑りやすくなるので、今年は少し早めに済ませることにした。もっと前からそうするべきだったのかもしれないが、年に2回とはいえ、どうも習慣というのは壊しにくいものである。

 年に2回のヘアカットとなると、自然と切る量もそこそこの多さになり、この時期だとカット後の頭や首周りはかなり寒く感じるようになる。その分、軽くもなるので、健康になったかのような錯覚に浸ることもできる。あくまで錯覚で、実際には健康どころか、冷えるせいか風邪気味になることも少なくない。脱皮直後のようなもので注意が必要である。

 さて、そんな冷え気味の頭のまま、たまに利用するショッピングセンターにも寄ったのだが、惣菜コーナーで弁当などと一緒に並べられている天丼に目を向けると、いつもならかぼちゃやサツマイモといった野菜天も乗っているはずなのに、えび天だけが4尾に増えていて、あとはお飾りのように大葉の天ぷらがあるだけになっていた。もう「天丼」より「えび天丼」を名乗るのがふさわしい姿である。行くたびに惣菜コーナーを覗いているわけではないので、ひょっとしたら季節や週ごとに替わっているのかもしれないが、増税や野菜の不作による影響なのだとしたら、これもまた心寒い話である。

 そういえば、かつて「バカはエビを好む」という、どこから生まれたのかわからない説を紹介していたテレビ番組があった。どこまで信憑性のある話なのかは知らないが、もしバカが増えているせいで天丼もエビのみが増えたのだとすれば、それは増税や野菜の不作よりも由々しき問題だろう。別にえび天が嫌いなわけではないけれど、私は多少お高くとも野菜天の多い天丼のほうが良い。

30-35 vol.7 「イカ天」特集

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白鳥の引き笑い

 白鳥の鳴き声は明石家さんまの引き笑いに似ている。ほぼ毎年のように我が家の近辺には白鳥が飛来するので、テレビを点けているわけでもないのに、どこからともなくあの笑い声に似た音がすると「もうそんな時期か」としみじみしたりする。

 さんまさんといえば「眠らない男」(一日に10~20分ほどの集中的な睡眠を2、3回とるだけで、一般的な長い眠りにつくことがないらしい)としても知られ、以前、『さんまのSUPERからくりTV』で、とある専門家が「それは、なんか鳥に似てるなあ」とコメントしていた。鳥類は右脳と左脳が別々に動くらしく、片脳が眠ったまま長時間飛び続けるらしい。笑い声(鳴き声?)だけでなく、生態まで似ているということだろうか。「眠らない九官鳥」なんてあだ名をつけられていたこともあった。

 うつ病の際、賑やか過ぎるテレビ番組は避けたほうが良いのだが、ナインティナインの岡村さんがうつ病で休養していた時、医者から渡されたと思われる注意事項をまとめた冊子に、その旨が明らかにさんまさんと思われる人物のイラスト付で記されていたらしい。確かにさんまさんの笑いというのは、受け手の健康状態が良好でなければ楽しむのは難しい気がする。スポーツのようなものかもしれない。嫌いなわけではないのだが、静養中の私もなるべく避けている(ただし、所ジョージさんが一緒にいるとかなり中和される)。

 白鳥の鳴き声もシーズン最初のものは風情に浸ることもできるが、近所でひっきりなしに鳴かれると辛いものがある。白鳥の鳴き声にも所さん的な中和させる何らかの存在があれば良いのだが、さっぱり見当がつかない。幸い、気に障るほど大勢で居座られることは今のところないので、鳥獣保護法を犯す危険性は低そうである。