天は自分の下に人をつくる

 なんだか10分おきくらいに、雪が降ったり止んだりするという落ち着きのない天気に見舞われており、「はっきりせえよ!」と無意識の関西弁にて天につっこみを入れてみたりしたせいか、私が外に出なければいけないタイミングでは雪が止み、家に入った途端にまた降りはじめるということがつづき、ひょっとして神様がようやくこの私に幸運とやらを恵みはじめたのだろうかと思いかけたのだが、この程度のことで貴重な幸運を消費してしまうのは、長い目で見れば不幸に見舞われているのと同じことのような気がしてきて、もういちど「降るならいっそどかっと降って、またわしを疲れさせてみい!」と天を怒鳴りつけてみたところ、強めの風だけ残して雪は止んだ。どうやら天は私の思い通りにだけはしたくないらしい。

 天を欺くほどの力が私にあるはずもないので、落ち着かない天気のことは諦め、なるべく外の景色に目を向けないで生活する努力をしてみたが、地下室に住んでいるわけでもないので、すぐに挫折した。無駄な努力は怠惰よりも忌むべきものなので、外の景色に目を向けない努力すら放棄し、目にうつるもの、耳に入るものすべてに対してなるべく反応しない、誇り高き怠惰を選ぶことにしたのだが、誇り高き怠惰というものは、ごく一部の聖人にしか到達できない境地らしく、これもまたすぐに挫折した。

 結局、聖人ではない私が、天気を気にせずに過ごすには、強制的に意識をなくす、つまり眠るしかあらず、かといって自由自在に眠りにつけるような能力もないので、導眠剤に頼って少し早めに布団に潜ったのだが、免疫力まで眠りやがってしまったらしく、なんだか喉がいがらっぽい。

 天に好かれぬまま、ままならぬ静養を続けている。