人に食べられるのが得意なフレンズ

 「イカは偉いな、どうやっても美味い」

 なんという番組だったのか分からないが、薬局の待合席でたまたま流れていたテレビ番組から、そんな台詞が聞こえてきた。イカがさほど好きではない人間からすると「どうやっても美味い」という意見には賛同しかねるのだが、本当にどうやっても美味いのだとしても、別にそれでイカが偉いということにはならない。イカは人間に食われるために生きているわけではない(もちろん、そんなことは発言主だってわかっていることだろうけれど)。

 しかし、食べられるのが得意なのかと思わされるような生き物というのは確かに存在して、驚くと気絶してしまうというヤギの一種などはその典型だろう。実際、食われまくっているらしい。『けものフレンズ』的に言えば、「狼に食べられるのが得意なフレンズ」である。

 過激なタイプのヴィーガンから殺害予告を受けそうな話になるけれど、人に食べられるのが得意なフレンズといえば、やはり鶏と豚だろう。同じ食肉用の家畜として飼育されている牛などに比べても、なんというか食われ易さが上回っているように思える。もしも、いっそ種の繁栄のためには人間に絶えることなく飼育されるほうが良いと遺伝子が判断し、品種改良もしていないのに自ら更に食われやすい体質に進化していったなら、彼らは胸を張って「人に食べられるのが得意なフレンズ」と名乗りだすことだろう。まあ、文字通りの意味で「名乗りでて」来られたら、とても食おうとは思わないが。漫☆画太郎さんの短篇に、作物や家畜が人に食われるのを防ぐため、人間そっくりの姿に擬態しはじめるという作品があったが、人語を解するだけでも充分に食われにくくはなるだろう。それでも食う者は食うだろうけれど。「獲物を食うのが得意なフレンズ」もまた多く存在するのである。