冷やし脳味噌VS湿度くん

 冬は冬で脂っ気のなさゆえに、すぐに皮膚のあちこちがひび割れて知らずに衣類や寝具を血で汚したりしている私だが、夏は夏で少しでも汗ばむと気持ち悪くて仕方なく、タオルや汗拭きティッシュで体を頻繁に擦り、風呂でも必要以上に皮膚を削り取り、揚句はあまりの暑さに対する怨念から冷水を浴びたりするものだから、弱っちい皮膚が擦り切れてこれまた知らぬ間に衣類や寝具を血で汚したりしている。凶悪事件に巻き込まれたわけでもないのに、ルミノール反応出まくりになるであろう生活はコロナ禍の今年も続いている。

 私が暑さを嫌悪しているのは幼少の頃からで、特に頭が熱されることを恐れた。いつごろからか、脳味噌がゆで卵のようになるイメージがつきまとい、ただでさえ自慢できるような代物とは言い難いのに、より残念なことになる気がして、なるべく冷やすように心がけた。

 ゆえに、夏となれば外に繰り出し、やれバーベキューだ、やれスポーツだと活発に動き回る人々のことは「脳味噌を痛めつけたがる連中」として馬鹿にしているふしがある。この発想自体が単純で馬鹿みたいではあるが、その程度の暴論を胸に抱いているだけで、わざわざ貧弱な自分の精神を苛む必要もあるまいと考え、敢えて目を逸らして生き続けてきた。しかし、社会全体が不要な外出を控えている現在の状況を見て、「ついに時代が私に追いついた!」などと不謹慎に喜んだりは決してしない。それもこれも、頭は基本的に冷やすように心がけてきたからであろう。

 冷やして乾かす。大抵のものはこれで長持ちするわけだから、うまくいけば若々しいまま長生きできるかもしれない。だから今年も湿度くんとかいう忌々しい存在には、さっさと退場願いたいのである。

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  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: DVD