理想は「シロ」か「忠吉さん」

 猫か狐か、はたまたアライグマか、夜中に動物が争っているような鳴き声をよく耳にする。争いの最中の鳴き声は普段の鳴き声とは違っているので、いったい声の主がどんな動物なのか、素人には見当もつかない場合が多々ある。

 野生動物が当たり前にうろついている土地だから、農作業の音同様、多少うるさく感じることはあっても、それ自体は日常でもあるので構わない。やはり迷惑なほどうるさいのは、むしろ無意味にエンジン音を響かせる頭の悪そうな自動車どもである。ただ、夏場に困るのは、外からあまりに頻繁に動物たちの争う声が聞こえていると、1階で窓を開けづらくなることである。なんだか、網戸を突き破ってくるのではないかと不安になるからだ。野生ゆえに、厄介な病気や虫を持っている可能性も高く、どうぞお上がりくださいというわけにはいかない。

 昔から近隣では、比較的広い行動範囲を持った状態でつながれた飼い犬をよく目にする気がするのだが、ひょっとしたら野生動物対策の一環として脈々と続いているのかもしれない。私が子供の頃だと、そもそも繋がれていない飼い犬も多く、幸い誰かが噛まれたという話は聞かないが、追いかけてくることで有名な犬は複数存在した(私も経験がある)。しかし、一応は飼い主によってある程度の健康管理がされていたであろう飼い犬だから、野生動物に襲撃される危険が高い状態よりも、若干ワンパクなわんこたちに噛まれる危険の方を黙認しておいた方が良かったのかもしれない。