病院で出される魚は脂や生臭さが少なくて良い

 入院経験が比較的多いせいか、病院の食事があまり苦にならないという話は以前にもした。少なくとも、学校給食より病院食が性に合っていたのは確かで、病状の関係で食欲がなかったことはあるが、嫌なものを出された記憶はない。食べきれなくとも、叱られるより心配してもらえる。周りが子供ばかりでも、なにしろ具合が悪いがゆえに入院しているため、不愉快に騒々しいということもまずない。もちろん、毎食が辛くなるほどの病状ではなかったことが幸いしているのだが。

 平均寿命の半分を終えるのも遠くない未来となった現在もなお、私の味覚は病院食によって大半を形成されたままのようで、薄味好み・素材の味好みというより、クドいものを身体が受けつけなくなったと言った方が近い。舌に味を刺青してくるかのようなゴテゴテギトギトしたものばかり増えていく昨今の食品事情は、ただでさえ生きづらい性格を持って生まれた私の人生をより一層困難なものにしている。とりあえず、何にでもマヨネーズとチーズをぶち込もうとする愚かな者たちは、四年くらい永平寺の修行僧のような食生活を送って、その脂ぎった思想自体を浄化してほしいとすら思う。

 さて、入院経験が多いとはいっても、2ヶ月以上に及ぶほどの長期入院の経験はほぼなく、それゆえか病院食において、繰り返し味わったメニューというものの記憶もあまりない。病状によっては、好みに関係なくほとんど口をつけられなかったことも多いため、あくまでも味わった記憶の有無の問題でしかないのだが、例をあげれば、どれだけ脳内を掘り進めても病院でカレーライスを食べた経験は一度しか見当たらない。それも4歳頃の話であり、小児病棟ゆえにいわゆる甘口のカレーだったとは思うのだが、風邪を悪化させたことによる入院でもあったため、どうしても味がよく思い出せない。調べてみると、病院においてもカレーは人気メニューのようだが、私には経験談として語ることは難しい。病院食との相性は良かったが、病院のカレーとは縁がなかったのだろう。

 ちなみに、病院とカレーの関係を軽く調べてみたところ、ボンカレーの袋(パウチ)は点滴袋の技術を応用したという事を知った。入院時代の思い出に浸りたい時は、ボンカレーの袋を傍に置くと良いかもしれない。

ファミリークッキング

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  • アーティスト:YMCK
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