ネオンテトラでかしこさUP

 「フーテンの寅って言葉の響きが熱帯魚みたい」という発言に対し、「ああ、ネオンテトラのことか」と合点がいくまでに数秒の時間を必要とした。中学の時ならもっと早く反応できていたはずなので、脳の回路が錆びついてきているのだろうなと感じる。魚の生臭さが苦手なので深刻なドコサヘキサエン酸(DHA)不足に陥っているのかもしれない。DHAが本当に頭の回転を良くする効果があるのかどうかは知らないが、私が魚をあまり食っていないことは確かである。魚肉ソーセージや魚肉ハンバーグでも効果があるというのなら、今年は積極的に摂取しよう。

 もし、ネオンテトラに大量のDHAが含まれているのだとしたら、綺麗ではあっても美味そうにはとても見えないあの熱帯魚が食用として流通しはじめたりするのだろうか。水槽の水ごとネオンテトラを丸呑みにする者も現れるかもしれない。その姿には知性の欠片も感じられないが、しかし、食事というのは生き物の営みのなかでも特に無防備になる時間なわけで、一時的に妖怪のようなあさましい姿を晒すことになったとしても、それと引き換えにリーマン予想を解けるほどの知性が得られるのだとすれば、私は喜んでネオンテトラを丸呑みしてみせよう。

 もちろん、そんな馬鹿な話があるわけないということは、いくらDHA不足の私でもわかることで、ゆえにネオンテトラの丸呑みなどというビックリ人間的なパフォーマンスを披露することはない。実際にビックリ人間だったとしても、生きた熱帯魚を呑み込む気にはなれない。綺麗に洗った碁石や鉄の玉のほうが良い。

 ビックリ人間といえば、フランスに飛行機を食った男がいた。飛行機だけでなく、自動車やら自転車やらも腹に収めた有名なゲテモノ食いなのだが、彼が同じ勢いでマグロを食えばDHAの効果で「俺はいったい何をやっているんだ……」と自分のおかしさに気づいただろうか。他人の趣味をとやかく言うのは良いことではないけれど(ゲテモノ食いを趣味と呼んで良いのかはわからないが)、もしこの男が、それまでの人生で食い尽くしたゲテモノと同じ量のマグロによってゲテモノ人生に終止符を打つことができたなら、私もDHAの効果を信じることができるだろう。

 

 P.S. ドラクエに出てくる「かしこさの種」は、きっとDHA豊富な種なのでしょうね。しかし、あれもまた種を齧っている姿はちっとも賢そうではないですね。