公開した後悔

 未来の見えない、というよりは未来を見たくない身分であるため、どうしても過去へ過去へと思いを馳せがちなのであるが、残念ながら過去にも特に晴れやかな気分になる記憶など見当たらず、ただでさえ不健康がちな精神状態を余計に悪化させたりもする。

 しかし、無理矢理前向きに考えれば、未来に苛まれるであろう後悔は、未来であるがゆえに無限の後悔の可能性をあれこれ想像してしまうだけだが、過去の後悔であれば、やっちまったことへの反省だけで済む。どちらかといえば、過去の後悔に悩むほうが、まだ精神を痛めつける度合いは低いのではないかと考えられるのである。

 よって、前向きに生きるために、未来に後悔してしまいそうなあれこれを想像して陰鬱とした気分になるのをやめ、せめて過去の後悔を思い返して陰鬱な気分になろうとしたのだが、あれこれ反省しているうちに、ではこうしたら良かったのではないかと思い立ったパターンの先に別の後悔のパターンを見つけてしまったりして、「いや、私は反省しようとしているのだ、絶望しようとしているわけではない!」と叫びたくなる気持ちにもなったが、それもまた実際に叫んだりした場合に考えうる後悔のパターンが無限に溢れ出てきて、危うく舌を噛み切りそうな衝動に駆られたりもしたが、舌を噛み切ってしまった場合のあらゆる後悔のパターンが怒濤のようの押し寄せてきたために、なんとか思いとどまることができた。

 前向きに考えれば、まだ自分は舌を噛み切る時ではない、生きていくべき存在なのだと捉えることもできるが、いささか窮屈である。目の醒めるようなアドバイスを求めたいところではるが、求められる相手も見当たらないので、こっそりここに書き散らかしておく。

([し]4-1)カレンダーボーイ (ポプラ文庫)

([し]4-1)カレンダーボーイ (ポプラ文庫)

  • 作者:小路 幸也
  • 発売日: 2010/12/07
  • メディア: 文庫