『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(33)

 「人間の内面を深く掘り下げる」という指針を持ちながら、「B型の人間とは合わない」などと酒の席で宣った専門学校の担任も含め、私が憎く思った教員の多くは命を落としているのだが、最も憎い相手は今も平気で生きているので、私に妙な期待を寄せていたのは退学した下北昇平だけだった。卒業からしばらくして、下北昇平が担任の骨を拾っていたらしいと山上から聞いたが、それもおそらく私のアドバイスのせいで、タソガレさんには念の為、高値のソーダ水を贈っておいた。その甲斐あってか、タソガレさんの彼女の背中で新種の鳥が求愛のダンスを踊る動画が、3年ほど経って送られてきた。

 私やタソガレさんが専門学校周辺のあれこれから距離を置いている頃も、下北昇平はひとり、講師たちが培養しているという“へいま様”を白日の下に晒し、高濃度の消毒液を注いで退治しようと躍起になっていた。しかし、結果的に成し遂げたのは下北を馬鹿にしつつ面白がって追いかけていた山上の方だった。山上は下北昇平が闇雲に叫びまわるのを傍目に、専門学校の問題点を見つけ次第、非常に現代的な方法で匿名告発し、そのうちに“へいま様”は萎みきり、代わりに岸田森勝新太郎植木等が『ジーザス・クライスト・スーパースター』のラストのように歌い踊るという痛快な大団円へと導いてみせた。