2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(68)

医者の娘が趣味で作ったプレートを金槌で砕き、不燃ごみに変えて正しく処理した日、豚とモロヘイヤの掛け合わせに成功した地元高校の敷地内で毛色の変わったムササビの親子が無人の電動車椅子に轢き殺されたという小さな新聞記事をみつけた。喫茶店の看板犬…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(67)

上映されたドキュメンタリー作品には、キネマユリイカ駅近くの厚い顔の店で生計をたてていた同期生も参加しており、在学中から顕著だった思い込みの激しさに拍車がかかっているようだった。論理性のなさを詩的と勘違いした文章は、駅周辺のみに置かれるフリ…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(66)

痛快と言って良い景色は、お嬢のスマートフォンから動画で送られてきたが、すぐに喜びを共有できる者が近くに居なかったのが残念だ。共に胸のすく思いになれたであろう級友たちの大半はすでに疎遠であり、それは少々悔しいことに担任の責任ではなく、私や級…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(65)

鍵穴に詰め込まれた金魚煎餅の粉は、キーによって更に車の内部に注ぎ込まれ、排ガスと共に赤錆の混じった愛車の臓物が吐き出された。焦げた金属片に引きずり出されたばかりの豚の腸を乱暴に絡ませたような愛車の臓物は、泥水溜まりにぶちまけられ、担任が耳…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(64)

連絡先を知っていても気軽に連絡できる知人などいないのだが、だからといって「どうしてお前にそんなにお金が必要なの?」などと会ったこともない親戚から説教される理由もないはずで、穏やかなアショロアの化石に打ち明けたところ、彼は時代にそぐわぬ隔離…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(63)

安眠とまではいかなかったが、首を吊りたくなるほどの悪夢に苛まれることは減ったため、外に出る機会を増やしてみたのだが、普段の生活の中でふと自ら首を締め付けたくなるような記憶が甦ってくることが増えた。その都度、頭を振って対応したが、骨粉の風味…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(62)

白樺は中学と高校の校歌でも歌われるほど一帯に群生しており、血を流す個体がいたところで子供であれば驚くこともなかった。白樺に群がるクワガタを採り過ぎた小学生が小麦の乾燥工場の奥に沈んだままでいるという噂が流れ、町内の小学生たちが肝試しに行く…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(61)

しかし、ギャグ漫画のような走り方のダクリュウ先生は、拗音も促音もない世界の住人だったが、寿司屋のトシさんの「表へ出ろ」の一言で、さらに児童数の少ない学校へ逃げ去った。倒れたクレーン車の下敷きになり、頭皮を抉られ、骨が露出してなお、自ら指示…

『今日までの夜に見た夢に彩られた走馬灯にも似た自分史』(60)

ようやく素麺をふたすすりできるほどに回復したのは、「魔法のような美少女」と称された彼女の姿を目にしてからで、かといって元来の食の細さが改善されるわけではなく、成人式を放棄して10年経っても、これといった思想的理由もないまま、カット野菜と果物…