本日も『聲の形』に関して(前々回にも増して冷静さを欠いております。ネタバレと冷静さの欠落した文章に注意。特に、あの黒髪女子推しの方は、読まないことをお勧めします)。
こんな悲しくて切なくて痛々しいもの冷静に読んでいられるか!
……失礼。取り乱しました。
『聲の形』第51話「西宮硝子」の話です。いやね、はやくまた硝子の笑顔が見たいとは言いましたよ。たしかに言いましたけどね。でも、こういうことじゃないんですよ、先生……。余計に悲しくなるだけじゃないですか。悲しみが主導権握りっぱなしじゃないですか。
しかし、ここまでくると、なんだかうっすらと「ほーら、みなさんが待ち望んでいた硝子ちゃんの心からの笑顔ですよ〜」と、この回を嬉々として描いている大今先生の姿が浮かんできたりもします。正直、いち硝子ファンとしましては、「橋事件」以降の展開に関しては、「大今先生の鬼!」と叫びたいところなのですが、一応少し気持ちを抑えて「大今先生のラムちゃん!」と叫ぶことにしてます(恥ずかしさという点では、こちらの方がダメージは大きいかもしれませんね)。
そりゃ前々回、書きましたよ。「硝子が幸せになってくれるのであれば、別に将硝の仲がどうなろうと構わない」と。ですが、これはいけません。これは駄目です。誰かなんとかしてあげてください。こんなに追い詰められている子が、ボコボコにリンチされたりしてたわけですか? あんまりな世界でしょう、それは。やーしょー、硝子の幻覚(?)の中でアホなこと言ってねえで、さっさと起きて硝子ちゃんをぎゅっとしてやれ。
しかしですね、硝子のこんな痛々しい姿を見せられてしまうと、どっかのバカの内面を描いた回ってのは一体なんだったのか、と(以下、またしても特に口調が荒れます)。どっかのバカ女がね……いや、バカ一人とは言わないよ。バカ二人が、だ。西宮さんがいなければみんなハッピーだったとか、ハラグロハラグロだとか、あんたより重い時間を過ごしてきただとか、自分はかわいいだとか言ってなけりゃあね、ここまで悲惨な事態に陥ることはなかったんじゃないかと(あの二人、特に片割れの黒髪に関しては、もう私は文章上、どんな汚い言葉をぶつけても心は痛みませんし、それに対する批判も聞く耳持たないことに決めました)。
その片割れの黒髪の回ですけどね、あれを読んで、まあいるわけですよ、私なんかには理解できないことですが、あの黒髪の姿を「切ない」「悲しい」と感じる人が。まあ、感性は人それぞれですからね(こんな手垢のついた、説得力のない言葉を使うことでしか、私には納得できないものです。申し訳ないですけどね)、そういう人もいるんでしょう。しかし、今回の硝子の姿は「これが切なさだ。これが悲しみだ。どうだ、この野郎」とでも言われているような気がしますよ。まあ、そう思わない人もいるんでしょうけどね。「一途」ですか。そうですか、そうですか(まあ、この辺は私の「倫理観」的な問題なので、どうしても乱暴な口調になりがち)。
第51話は本当に悲しい。痛々しい。こんな表現を食らってしまっては、私には、冷静な考察など物語の完結を待たなければ不可能かもしれません。想像を絶する痛々しさに耐えるため、私は48時間分の底抜けに明るいバカな話を欲しましたよ(実際、色々他にやらなければいけないことがあるのに、『水曜どうでしょう』を観まくったり、『裸の銃を持つ男』3部作を字幕で、そして日本語吹き替えでそれぞれ2回ずつ鑑賞したりしました)。これは、センブリ茶に同じだけの量のサッカリンやチクロを混ぜ込むような荒治療どころか自殺行為と言っていい所業かもしれませんが、そうでもしないと、いくらフィクションとはいえ、私の精神が持ちません。
それでも、少しは考察らしいことを(ここから、考察口調に切り替えます)。「硝子は自分を特別視しすぎ」といった意見に関して。
これは劇中での植野の「悲劇のヒロインきどり」といった発言にも繋がってくることだが、特別視しているかしていないかで言えば、同じ障害を持っていても、特に問題なく生きている人はいるわけだから、たしかに「特別視して」はいるのだろう。しかし、この場合、問われるべきなのは、特別視しているかしていないかではなく、特別視せざるを得ない(=自分が呪われた存在であると思わざるを得ない)境遇であったかどうかなわけで、そこを考慮せずに、ただ「硝子は自分を特別視しすぎだ」と批判するのは、ちょっとそれこそ乱暴な話ではないかと思う。
おそらく、母宮のこれまでの振る舞いからして、障害を持っていても「強く」生きている人のことは、嫌と言うほど言い聞かせられてきたのではないかと思う(母宮がそうせざるを得なかった境遇については、また別として)。ゆえに硝子は、「障害を持ってなお強く生きている/普通に生きている者」の存在を知っているからこそ、さらに自己肯定感が低くならざるを得なかったのではないか、とも考えられる。第51話で描かれた硝子の「理想の世界」が、障害を持っていても得られたものとしては描かれていない(あの世界で言葉が正確でないのは、硝子がそもそも「音のある世界」を知らないせいだが、しかし、あの世界では明らかに硝子は障害のない子供として存在している)のも、その影響だろう。硝子は、障害を持っていても「普通」に「強く」生きようと試みたが、それが叶わなかった。叶わないどころか、周囲を不幸にしてしまった(こちらから見れば、不寛容な人間たちが自滅しただけのことではないかとも思うのだが、本人にはなかなかそうは思えまい。というか、そう思えるような子だったら、死にたくなるほど悩んでしまうこともなかっただろう)。
障害があっても「強く」「普通」に生きることは可能である。そのように擦り込まれていれば、それを可能にできない自分は「弱く」「普通ではない」者だと思ってしまって当然だろう。そして、仕方なく他人を不幸にしない為に、色んなことを諦めて、「処世術」的な作り笑顔でやり過ごそうとすれば、今度は「はっきり意見を言え」だの「逃げ」だのと言われ、私なら「じゃあ、どうすれっていうんだ馬鹿野郎!」と、とうの昔にキレているところなわけで、やっぱり硝子は弱くなんかはないのだ。だが、「そうだ、弱くなんかないのだから、もっと立ち向かえ」などと軽々しく言うのは、あまりに無責任だろうということだ。逃げて、甘えて、考えることも想像することも放棄しているのは、どちらか。
「たすけてくれといったところで たすけてくれるけ おれの事/もういいさ おまえら おれの事ふりむくな/おれはめ○ら ○くら者 すべてのみえる めく○者」(村八分「あッ!」)
それにしても、将也は大丈夫なのだろうか。命は助かったとしても、鬼……訂正・ラムちゃんな大今先生のこと、下手をすると『ジョニーは戦場へ行った』みたいな内容になるのでは? と不安は募るばかり。ちなみに、もし『ジョニーは戦場へ行った』どころか、ロックオペラ『トミー』のような展開になったら、「ああ、大今先生、魂削りすぎて、ついにおかしくなってしまったんだな……」と別の意味で私は涙を流すことでしょう。
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