少年だった僕は花火など見たくもなかった

 風呂に入る前までは雨音が激しかったはずなのに、風呂上りの私の耳に飛び込んできたのは、なにやら遠くで市街戦がはじまったような騒音で、どうやら雨が止んだのを幸いにどこかで花火大会が決行されていたらしい。

 小児喘息だった私には花火大会のような人が大勢集まる催しは縁遠く、そもそも「煙」というものが大敵であるゆえ、家庭用の花火でさえ窓越しに祖父が見せてくれた程度の経験しかない。孫を喜ばせようとはりきってくれていたのだが、祖父が火柱に覆われているようにも見えて、「あ、じいちゃん燃えちゃう」と心配になった記憶がある。

 もうすぐ小学生になるという頃、隣町が戦禍に巻き込まれる夢を見た。我が家にまで響いてくる砲撃の音を「花火が上がっているだけだから」と言って、夢の中の両親は私を安心させようとしていた。長いとも短いとも言い難い頃合となってしまった私の人生の中でも、とりわけキナ臭くなってしまっている今日、平和なはずの花火の音もあまり好ましくは感じられない。

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